ビジネス書や自己啓発書のコーナーに行けば、必ずと言っていいほど並んでいる『夢をかなえるゾウ』(水野敬也・著)。
十数年前に発売されて以来、ずっと売れ続けている超ベストセラーですが、「存在は知っているけれど、実はまだ読んでいない……」という方も多いのではないでしょうか。実は、私もその一人でした。
これまで「成功の法則」や「運を掴む習慣」に関する本をたくさん読んできた私が、今回ついに重い腰を上げて読んでみたのですが……「なぜ、この本が今なお読み継がれているのか」その理由が痛いほどよく分かりました。
効率や「コスパ・タイパ」が最優先される今の時代にこそ、大人、そして子供たちに向き合う教員に深く刺さる「人生の本質」が詰まっていたのです。
今回は、本書に登場する神様・ガネーシャの「29の課題」を振り返りながら、この本が本当に伝えたかったことについて、私なりの視点で考察してみたいと思います。
『夢をかなえるゾウ1』の課題一覧(全29個)

物語の中では、人生を変えたいと願う主人公のもとに、関西弁を話す奇妙な神様「ガネーシャ」が舞い降ります。そして、1日にひとつずつ、ユニークな課題を出していくのです。
まずは、その29個の課題を一覧でチェックしてみましょう。
【ガネーシャの課題一覧】
- 01: 靴をみがく
- 02: コンビニでお釣りを募金する
- 03: 食事を腹八分におさえる
- 04: 人が欲しがっているものを先取りする
- 05: 会った人を笑わせる
- 06: トイレ掃除をする
- 07: まっすぐ帰宅する
- 08: その日頑張れた自分をホメる
- 09: 一日何かをやめてみる
- 10: 決めたことを続けるための環境を作る
- 11: 毎朝、全身鏡を見て身なりを整える
- 12: 自分が一番得意なことを人に聞く
- 13: 自分の苦手なことを人に聞く
- 14: 夢を楽しく想像する
- 15: 運が良いと口に出して言う
- 16: ただでもらう
- 17: 明日の準備をする
- 18: 身近にいる一番大事な人を喜ばせる
- 19: 誰か一人のいいところを見つけてホメる
- 20: 人の長所を盗む
- 21: 求人情報誌を見る
- 22: お参りに行く
- 23: 人気店に入り、人気の理由を観察する
- 24: プレゼントをして驚かせる
- 25: やらずに後悔していることを今日から始める
- 26: サービスとして夢を語る
- 27: 人の成功をサポートする
- 28: 応募する
- 29: 毎日、感謝する
疑問:なぜ「靴磨き」や「募金」で人生が変わるのか?

この一覧を見て、どう感じましたか?
後半の「人の成功をサポートする」や「毎日感謝する」「応募する(行動を起こす)」などは、「確かに成功するために必要そうだな」とイメージが湧きやすいですよね。宝くじも、買わなければ絶対に当たらないわけですから。
しかし、最初の「靴を磨く」とか「コンビニでお釣りを募金する」なんて、一見すると成功とは何の関係もないように思えてしまいます。
ここに、本書が長年読み継がれている最大の秘密が隠されています。
「1回」なら誰でもできる。けれど…
靴を磨くことも、募金をすることも、行動自体はとても簡単で、誰にでもできることです。
しかし、「それを一生、毎日続けられる人」はどれだけいるでしょうか?
1回、1週間なら誰でもできます。けれど、1ヶ月、1年、10年……と期間が長くなればなるほど、脱落していく人がほとんどです。
成功した人たちが、みんな一世一代の靴磨き職人だったわけではありません。ただ、成功した人には、自分がやると決めたことを泥臭くやり続けた「磨き続けた武器(習慣)」が必ずあるのです。
ガネーシャが教えたかったのは、個々の行動そのものの凄さではなく、「誰でもできる簡単なことを、誰も真似できないくらい継続する」という、成功のための土台(マインド)だったのだと気づかされます。
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コスパ・タイパ至上主義の時代に見落としがちな「プロの心構え」

最近は私の働く職場でも、働き方改革の影響もあり「コスパ」や「タイパ(タイムパフォーマンス)」がとにかく重視されるようになりました。
無駄を省き、効率よく動くこと自体は素晴らしいことです。
しかし、その効率を追い求めるあまり、どこか「薄っぺらくて、もろい仕事」になっていないか? と危機感を覚える瞬間があります。
「ネットで見たから」「世間の風潮がこうだから」と、近道ばかりを探す“インスタントな働き方”が増えてはいないでしょうか。
伝統の世界に学ぶ「見習い期間」の意味
よく、職人の世界では次のようなことが言われます。
- 寿司職人: 一人前に板場に立つまで、10年の修業が必要
- 落語家: 見習い・前座の4年間は、理不尽に耐える泥臭い日々
今のタイパ重視の価値観から見れば、「非効率的だ」「そんなの時間の無駄だ」と一蹴されてしまうかもしれません。しかし、この一見無駄に見える期間こそが、成功のために不可欠なのだそうです。
なぜなら、面白い噺(はなし)のテクニックや、美味しい寿司の握り方といった「技術」は短期間で教えられても、プロとしての「心構え(マインド)」は、長い時間をかけて自分を磨き続けることでしか身につかないからです。
『夢をかなえるゾウ』が十数年売れ続けているのは、そんな「自分を見つめ、愚直に磨き続けることでしか、本当の成功は掴めない」という、時代が変わっても風化しない泥臭い真実を教えてくれるからではないでしょうか。
まとめ:自分の努力の末に掴んだ成功にこそ、価値がある

いろいろな本を読んできましたが、やっぱり結論は同じです。
成功するためには、己を律し、努力し、継続するしかない。
日々の過ごし方を丁寧に整え、目標に向かって淡々と活動をし続ける。その泥臭い積み重ねの結果として、ようやく「運」や「成功」が舞い込んでくるのです。
もちろん、何をもって「成功」とするかは人それぞれです。全員が石油王のような大金持ちになれるわけではありません(本書はお金を一つの基準にしていますが、人生にはお金で測れない価値がたくさんあります)。
けれど、周りと比べるのではなく、「自分の努力の末に掴み取ったささやかな成功」にこそ、人生の本当の価値があるのだと信じています。
『夢をかなえるゾウ』は、そんな大切な「心構え」を、笑って泣けるストーリーで教えてくれる尊い1冊でした。私も、自分の日々の習慣を今一度見直してみたいと思います。

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