一度叱っただけで、新入社員が辞めてしまった。今の子は、叱られ慣れていない。どう指導していいかわからない。
そんなことを聞いたり、ニュースで見たりしたことはないでしょうか?
学校現場でも、子どものためを思って叱ったら、「もうこの先生が怖い」と不登校になってしまったなんて話もありました。
もちろん指導の仕方にも工夫をしなければいけないですが、社会に出て逆境に立った時、うまくやり過ごす事も必要です。
そこで、今、注目されているのが「レジリエンス」と言う力です。
今日は、レジリエンスについてお話をしたいと思います。
レジリエンスとは?
「レジリエンス\とは聞き慣れない言葉ですね。私も本を読んで初めて聞きました。
言い換えると、「回復力」「復元力」「心のバネ」となりますが、「心のしなやかさ」と捉えると、スッキリします。
元々は、「バネが縮んだ時に元に戻る力」「バネの弾力」を指す工業用語で、心理学では、「落ち込んだ時に、そこから立ち直る力」「ストレスに打ちのめされた時に回復する力」のことを言います。
さらには、ストレスをスルーすることができるようになるのもレジリエンスです。
先生に叱られれて、落ち込んでしまうのか、それとも受け流してスルーしながらも自分に大切なところは身につけていくか。
レジリエンスが高ければ、辛いことでも余裕を持って冷静に対応できます。
仮に落ち込んでも、引きずらない、立ち直りが早い。
人間関係も融通を利かせて、余裕を持って対応できる。
それがレジリエンスが高い人の特徴です。
まさに、今、必要な力ではないのでしょうか?
ストレスに強くなってはいけない
よくストレス耐性があるとか言われます。
ただ、ストレスに強くなってはいけないと思うのが、私の持論です。
仕事を例に例えてみましょう。
寝なくても平気。起きている時は、常に仕事ができるを想像して下さい。
それを何年も続けたらどうなるでしょう?
鬱になって、体調を崩して、元のように働けなくなるのは火を見るよりも明らかです。
ストレスも一緒です。ストレスに強いからといって、ずっとストレスをかけ続けられると、どこかでペキっと折れてしまいます。
折れた心の棒は元のようには戻れないのです。ここがポイントです。
対して、レジリエンスを持っている心は、柳のような枝だと想像してください。
柳の枝はしなやかで折れません。ストレスに対しても、ひらりひらりといなすことができます。
このしなやかさがレジリエンスなのです。
一流大学は出たけれど・・・。
冒頭でも書きましたが、一流大学を出て、一流企業に就職したけれど、1回上司に叱られただけで、出社できなくなってしまった。
そんなことがニュースなどでも取り上げられるようになってきました。
これだからZ世代は・・・。なんて言われるのですが、なんでこんなことになってしまったかというとレジリエンスが低いからです。
社会人として生き抜くために必要な力「レジリエンス」
さて、なぜ優秀な人なのに、一度叱られただけで、出社できなくなってしまうのでしょうか。
こういう傾向にある人は、失敗や挫折、人から叱られた経験がなく、とんとん拍子の学生時代を歩んできた人ほど、社会人になってからきついのです。
賢さはあっても、ストレスに耐えるHPが限りなく少ないのです。
今まで上手くいっていた分、プライドが高く、人に助けを求められない。
人に相談することもない。1人で悩み続けて、さらにストレスと苦痛を増やしてしまう。
こんなふうに一度のつまづきから負のループに入り、抜け出せなくなってしまうのです。
逆に、社会人だからといって、失敗するのは当然です。
学生時代と、社会人は求められるスキルは、同じところもありますが、大きく違います。
「ホウレンソウをしっかりしましょう」なんて学生時代には言われたことはないはずです。
仕事ができてもやっかみなどから足を引っ張られます。逆にできなければ、影口を同僚に言われるでしょう。
思わぬところで落とし穴があるのが社会人です。
これらのストレスをスルーするために必要なのが「レジリエンス」です。
ストレスをスルーできれば、失敗に悩むことはない。最強の社会人になれます。
6人に1人は鬱になる
OECDの調査によると、2020年の調査によると、日本人の17.3%。実に6人に1人は鬱になるという調査結果が出ています。
厚生労働省の「過労死等防止対策白書(2024年度)」によると,「仕事や職業生活に関する強い不安、悩み、ストレスを感じる人の割合」は82.7%に上ります。
これだけ、ストレスを感じる人は多い社会で、「自分だけはメンタルはやまない!」と言えるでしょうか?
だからこそ、小さいうちからレジリエンスを意識して高めてほしいのです。
レジリエンスが高い人は、成長できる人
The only real mistake is the one from which we learn nothing.
「本当の失敗とは、失敗から何も学ばないことである」ーヘンリー・フォード(自動車会社フォード・モーターの創設者)
Only those who dare to fail greatly can ever achieve greatly.
「大失敗を恐れぬ者だけが大成功を手にできるのである」ーロバート・ケネディ(アメリカの政治家)
失敗に関する名言がとてもたくさんあります。
レジリエンスが高い人は、どんなストレスに出会ってもするっとかわすことができます。
それどころか同じ失敗を繰り返さないように、中立な視点から、論理的に出来事を振り返り、修正・改善ができる。
つまり、失敗を経験に変えて、自己成長をし続けることができる人間になることができるのです。
レジリエンスを高める3つの方法
それでは、レジリエンスを高めるにはどうすればいいのでしょうか?
七転び八起き 失敗をたくさんすべし
最近の親や先生は失敗しないように、先回りしすぎていると言われることもあります。
それは、失敗を悪いこと、避けるべきことと考えているからではないでしょうか?
生まれて、初めて立って歩こうとする子を想像してください。
何度も転びながら、歩けるまで挑戦しますよね。転ぶ中で起き上がる方法を身につけます。
転んで、起き上がる、これが経験です。レジリエンスを高める最大のトレーニングになります。
人生でも一緒です。学生時代のうちにたくさん失敗をしましょう。
失敗をすることが誰でも不安や恐怖があると思います。
授業で手をあげて、もし間違いだったらと思うと手を上げられない・・・。
そんな経験をしたことがある人も多いと思います。
もし問題を間違えても、「違うよ。」と言われておしまいです。
ただ、社会人になると、そうはいきません。もしかしたら会社に何百万、何千万と損害を出すこともあります。
だからこそ、学生のうちにたくさん失敗を経験することで、「回復力」を鍛えるトレーニングになるのです。
失敗は「フィードバック」で経験になる。
失敗は失敗のままで放置してはいけません。
なぜ失敗をしたのか、なぜうまくいかないのか、なぜ怒られたのか。
その理由を見つけて、次のチャレンジに活かしていく。
これを「フィードバック」といいます。
フィードバックをすると、失敗が経験になるのです。
先生や親なら、「失敗をしたときに次はどうすればいいのか」一緒に考え、フィードバックをしてあげることで、子どもたちは次は頑張ろうという思いが持てるのです。
失敗はしてもいいですし、是非させてあげたいです。
ただし、必ずフィードバックをして、失敗を経験に変えられるようにしましょう。
失敗は転ぶのと一緒で、若いうちは軽いケガですみますが、歳と取ると、大怪我につながります。
若いうちにたくさん失敗して、成長していきましょう。
完璧な成功、完璧な失敗はない。その「ぼちぼち」を見つけよう。
成功、失敗。好きか嫌い。イエスorノー。
物事を2者択一で見ていくとわかりやすいので人間はそんな考え方をしがちです。
これを「0/100思考」(精神医学では二分法的思考法)といいます。
この考え方は、実はメンタル疾患になりやすいです。
テストで考えてみるとわかりやすいです。
「テストで1問間違えただけで、98点だったぞ。頑張れた!」という人と、「テストで1問間違えて、98点だった。この間違えさえなければ・・・。」という人。
1問間違えたのは一緒ですが、それでも成功と捉えるか、失敗と捉えるかで見方が変わりますよね。
メンタル疾患になりやすい人は、後者の思考をしてしまいがちなのです。
これを続けると、精神状態が悪くなり、最終的には自殺・・・。なんてことにもなりかねません。
物事には、「イエス」「ノー」以外に、「普通」「ぼちぼち」という状態があります。
この考え方ができれば、自分を責めることなく、楽になります。
この考え方がレジリエンスを高めるのです。
例えば、授業で挙手をして間違えたとしましょう。
「間違えてしまったー。」で落ち込む前に、「それでも、挙手して発言したのは自分偉いよね。」、「解答の中でここまでは間違ってなかったよね。俺すごい。あと少しだったな。」と考えるようにすれば、失敗じゃなくなりますよね。
さらには、自分でどこまでできたかフィードバックもすることができています。
「ぼちぼち」を考えるだけで、人生は楽になり、さらには成長できる芽が見えてきます。
これもレジリエンスを高める考え方、トレーニングの1つです。
ニュートラル(中立)の視点を持つ
人間は、先入観で物事を考えてしまいがちです。
たとえば人間関係。一緒に働くことになった同僚Aを例に考えてみましょう。
初めて会って話すと、「服装も趣味も話も合わない。もうこの人とは話さない!」
こうなってしまうと、いい仕事はできませんよね。
もう少し話してみると、「Aはこんな特技がある。あ、〇〇の映画私もみた。映画の話し合うかも。思ったより紳士的」なんてことが見えてきます。
そうするなかで、人間関係ができてきて、いい仕事ができるようになってきます。
情報が少ない状態で「好き」「嫌い」で判断してしまうと、あとあと、間違った判断を下してしまったり、進展がなくなります。
だからこそ、ニュートラル(中立)で判断できるように、客観的にみられるようになると、人生が楽になります。
ニュートラルな視点を持つためには「悪口を言わない」ことが大切です。
悪口を言うと、「粗探し」をするようになります。つまりネガティブ思考が強化されるのです。
それよりも、人を褒める、励ます、応援する、親切にするなど相手の良いところを見つけていきましょう。
そうすることで、人間関係も深まり、自己肯定感も高まります。
菊池省三先生の「褒め言葉のシャワー」が有名ですが、これは、人間関係を良くするだけでなく、それぞれの子のレジリエンスを高める練習にもなっているのです。
最後に
おまえは 麦になれ きびしい冬に芽をだし ふまれて ふまれて つよく 大地に 根をはり まっすぐにのびて 身をつける 麦になれ
ー中沢啓治「はだしのゲン」より
「はだしのゲン」は原爆が落とされ、戦後の苦しい日本で強く生きていく少年 ゲンの物語です。
その中で主人公のゲンにお父さんがかける言葉を引用しました。
大切なのは、踏まれても何度も立ち上がることなのです。
人生は自分が作る物語。一度きりの人生だからこそ、ハッピーエンドで迎えたいですよね。
今日は、ハッピーエンドを迎えるために必要な力、「レジリエンス」についてまとめました。
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