【中3 平方根 実践記録・指導案】 今までの計算法則は成り立つの?(2023.09.19追記)

指導案

平方根で行った実践をまとめました。

今まで、計算が思った通りにならない(平方根の加法減法)ことに焦点をあてて、意識付けをさせようと考えた実践です。

ぜひご意見ください!

主題設定の理由

生徒の実態

協同学習を通した、主体的で深い学びを目指して

今回の研究では、協同学習学会の協同学習のモデルを使って、授業を考えている。協同学習とは、杉江修治によると、

学級のメンバー全員のさらなる成長を追求することが大事なことだと、全員が心から思って学習すること
-杉江修治(2011).「協同学習入門 基本の理解と51の工夫」ナカニシヤ出版.p20
と定義されている。
 

本研究では、「生徒のもっている数学的見方や考え方を明らかにしながら、全員が『こういうふうに考えればよかったんだ』と生徒が思えるペアでの話し合い」を、協同学習として定義する。

この考え方をベースに、クラス全員で高め合える授業を目指したい。

研究の仮説と手だて

仮説と手だて

【仮説】

どうしてそのような考えに至ったか、友達の数学的見方・考え方のもつ良さを共有させることができれば、「こういうふうに考えればよかったんだ」と対話を通して、クラス全員で学ぶ生徒の姿を引き出せるだろう。

【仮説に対する手だて】

手だてⅠ 計算法則を理解するために、生徒の設定した数値の意味を考えさせる。

手だてⅡ 友達の数学的見方・考え方のもつ良さを共有するために、生徒の発言を焦点化する問い返しをする。

手だてⅢ 新しい課題に対して、既習事項の見方・考え方を生かすために、学習の経過を残し、いつでも振り返られる環境を整える。

検証方法

本研究では、平方根の四則演算の法則を、一般化して考える内容である。

ただ、平方根の演算をいきなり一般化して考えることは難しい。

そこで、手だてⅠとして、演算する数値を生徒に決定させる。

生徒が数値を決定することで、今回考えなければならないことを生徒が具体的に理解できるはずである。

さらに、数値を設定する中で、生徒が意図して計算しやすい数値を設定する場合がでてくるだろう。

なぜ、その数値にしたかを明らかにすると、平方根の演算について、「こういうふうに考えればよかったんだ」と、どの生徒も感じることができると考える。

教師側としては、この考えを、四則演算の様々な場面で応用できているか、生徒の様子を見とることで、手だてⅠの有効性を検証する。

次に、生徒の発言に対して、教師は「○○さんはどうしてこのように考えたか分かる?」と問い返すことを手だてⅡとして講じる。

そうすることで、生徒が何となく理解した「解法の根幹」となる考え方を、言語化し、より確実に理解できると考える。

それをペアで話し合わせることで生徒が「こういうふうに考えればよかったんだ」と感じられるようにしたい。

こちらについては、生徒の話し合いやつぶやき、今日の収穫(振り返り)から手だてが有効だったか検証する。

そして、手だてⅢとして、知識の差があることで、話し合いがつまずかないようにしたい。

そのために、単元の最初に、学習に当たって、生徒からの疑問をまとめ、シラバスとして掲示する。

それと並行して今まで学習したことの振り返りを今日の収穫としてまとめていく。これらを合わせて「単元マップ」と呼ぶこととする。

話し合いの中で、分からないところがあったら、単元マップをよりどころとすることで、全員が知識を揃えて、学びを深めることができるだろう。

また、単元マップを振り返ることで「こういうふうに考えればよかったんだね。」とそれぞれの生徒が立ち返られるようにしたい。

こちらについても、生徒の話し合いや振り返りの様子から手だてが有効だったか検証をする。

以上のことを踏まえ、抽出生徒と単元を以下のように計画し、実践をした。

抽出生徒Aについて

単元構想(6時間完了)

研究の実際

問題の数値を設定し、生徒の考え方を理解する生徒(根号を含む式の乗法)

授業の最初に、次の問題を提示した。

$$\sqrt{a} \times \sqrt{b} = \sqrt{a \times b}$$

「まずは、数値を代入して、具体的に考えてみましょう。かけ算の問題を作ってみてください。」と発問した。

生徒から、「$\sqrt{3} \times \sqrt{5}$…①、$\sqrt{4} \times \sqrt{9}$ …②、$\sqrt{2} \times \sqrt{7}$という計算を考える」とでてきた。

そこで、生徒たちに「どの問題から考えていく?」と尋ねると

数人の生徒から「②から考えたい。」と答えが返ってきた。

この後、②の問題を作った生徒に「これってわざと?」と聞くと、「これなら計算できると思って。」と話した。

ここで「$\sqrt{a} \times \sqrt{b} = ?$の“?”ってどう書けばいいと思う?」と尋ねると、

「$\sqrt{a \times b}$になりそう」と生徒Aは予想を発言した。

生徒の設定した数値の意味を考えさせることと、作問をした生徒の数学的見方・考え方を、全体で考えさせる問い返しをしたことで、【資料3下線部】のように、生徒Aは根号の乗法の計算について見通しを立てることができた。

手だてⅠ、Ⅱは有効に働いた。

教師 :どうして、②から考えたいって言ったか分かるかな?
生徒 :(悩む)
教師 :Bさん、なんで②なら考えられると思ったの?みんなにヒントを教えてくれない?
生徒B:だって、やって特別じゃん。これ、小学校の計算だよ。
生徒A:あ、分かった!
教師 :じゃぁ、みんなで話し合ってみましょう。

教師 :みなさん、どうして②なら解けるか教えてください。
生徒A:だって、だから、答えは6。もし、√の中だけ取り出してかけ算したら、$\sqrt{36}=6$。になる。もしかして、√の中の数字をかければいい?
【資料3】 ②の考えの話し合い

次に、生徒たちに「①や③についても確認してみましょう。同じようにできる?」と聞くと、

「できないけど、電卓使えばできるよ。単元マップに、 $\sqrt{3}$や$\sqrt{5}$の小数の値が書いてあるから。」と生徒Aは見通しを立てた。

①の問題を作った生徒に、この乗法にした理由を聞くと、

「単元マップに、値が書いてあったから電卓使ったら計算できると思った。」と話した。

単元マップに書いてある数値を使って計算を考えられると見通しを立てた生徒Aの姿から、手だてⅢも有効に働いたといえる。

【資料4】は、授業後半の板書である。

電卓の計算、代数的証明のどちらも、生徒は考えを出し、それぞれで計算法則について理解を深めた。

【資料4 代数的証明】では特に、生徒の説明の後

「これってどのように計算したか分かる?」

と問い返すと、

「$(\sqrt{a})^{2}\times(\sqrt{b})^{2}=\sqrt{a}\sqrt{b}$の所がよく分からない。」

といった言葉が、生徒Cから出た。

それに対し、生徒Aが

「√は、2乗すると平方根が外れる数って勉強したじゃん。の√の帽子が外れたんだよ。」と話した。

生徒Cはこの発言を受けて、「なるほど!」と理解を示した。

生徒Cは、平方根の定義の理解が曖昧になっていたが、教師が、問い返しをして、生徒Aがその補足をしている。

ここでは、生徒Aが既習事項を振り返り「こう考えれば良いんだよ。」と伝えることができている。

手だてⅡは有効に働いた。

【資料4】 根号を含む式の乗法の計算方法

【資料5】は生徒Aの今日の収穫(振り返り)である。

②の計算から、根号の乗法の計算方法について、どう考えればよいかについて、確かな理解をしていることが見て取れる。

特に【資料5赤下線部】のように、

「$\sqrt{4}=2、\sqrt{9}=3$のように整数値に直せる計算で、計算を考えてみると、解けそうだぞ。」と理解していることが分かる。

手だてⅠは有効に働いた。

【資料5】生徒Aの今日の収穫(振り返り)

前時の数学的見方・考え方を使って平方根の加法を考える生徒

授業の最初に、次の問題を提示した。「$\sqrt{a}+\sqrt{b}=\sqrt{a+b}$は成り立ちますか?…(ア)」20人中19人の生徒が「成り立つ」方に手を挙げた。

理由を聞くと、「乗法でも $\sqrt{a} \times \sqrt{b} = \sqrt{a \times b}$だった。加法でも成り立つと思う。なんで(先生は)わざわざ聞くの?」と話した。

そこで、「どうやって確認する?」と尋ねると、生徒たちは、

「とりあえず、数字を考える。」

「√を小数に直して計算する。…①」

「√が整数になる値で計算をしてみる。…②」

「(ア)式の左辺と右辺をそれぞれ2乗して文字式のまま計算してみる。…③」

と、単元マップ【資料6】を振り返りながら、アイデアを出した。

【資料6】 単元マップの掲示

今までの内容を振り返って、見通しを立てている。手だてⅢは有効に働いた。

その後、「①、②、③どれで考える?」と尋ねると、②がほとんどで、①、③の考えで解くという生徒は、1人、2人程度だった。

「なんで②で確かめるの?」と生徒Aに尋ねると

「電卓いらないし、とりあえず考えるなら、②が整数に直すだけ。計算(法則)を見つけやすい。」と答えた。

前時で、上手くいった方法を本時でも活用し、(ア)の予想を確かめようとする生徒Aの姿が見られた。

「なんで②で確かめるの?」と問い返すことで、前時で見た数学的見方・考え方を本時でも利用している生徒Aの姿が確認できる。

手だてⅡは有効に働いた。

ここまで出たところで、「それぞれ確認をしてみましょう。」と指示をして、生徒一人一人に考えさせた。

自分の考えがまとまった後、近くの生徒でノートを見合うように指示をした。
そのときの生徒Aペアの話し合いが【資料7】である。

生徒A: $\sqrt{2}+\sqrt{3}=1.414+1.732=3.146$だけど、$\sqrt{5}=2.236$だから、おかしい。こんなことってある?
生徒B:私は$\sqrt{4}+\sqrt{9}=2+3=5$と考えたよ。$\sqrt{13}$にならないから、やっぱり予想みたいにならないよ。
生徒A:3.146に近い√の値がないか、電卓で調べたけれど、でてこないじゃんね。
生徒B:やっぱり最初の予想みたいにならないんだよね。じゃあ、たし算ってどうやるのかな。
【資料7】あるペアの話し合い

2つの方法を突き合わせてみた結果、予想が成り立たないことを生徒AとBは確認できた。話し合いの最後には、どうすればいいか悩んでいることが分かる。

最初の「$\sqrt{a}+\sqrt{b}=\sqrt{a+b}$は成り立ちますか?」という問題から、具体的数値を生徒に決めさせ、計算させてみたことで、「$\sqrt{a}+\sqrt{b}=\sqrt{a+b}$は成り立たないこと」に気づき「どのように√の加法を表すのか」と生徒自身で新しい課題を作ることができた。

生徒が問題分析をし、が成り立たないことを気づく上で、手だてⅠは有効に働いた。

全体共有では、生徒A、Bの考えを全体に共有させた後、代数的に両辺を2乗した計算が一致するか確認する方法を、生徒Dに発表させた。

このとき、生徒Dは「前習った乗法の公式を使って、$(\sqrt{a}+\sqrt{b})^{2}=a+2\sqrt{ab}+b$にならないからおかしい。」と結論づけた。

ただ、既習の「式の展開」の乗法公式と結びついていないのでないかと教師は考え、「ところで、この計算ってどんな知識を使ったか分かる?」と生徒全体に問い返した。

生徒Dは「$(a+b)^{2}=a^{2}+2ab+b^{2}$だった。この$a$,$b$の部分が$\sqrt{a},\sqrt{b}$に置き換わるから、$(\sqrt{a}+\sqrt{b})^{2}=a+2\sqrt{ab}+b$となる。」と説明を付け加えた。

そうしたところ「展開公式がみえたよ。平方根でも使えるんだね。」と生徒Aが気づいた。

平方根の計算でも、乗法公式が成り立つことを理解することができた。

手だてⅡは有効に働いた。

成果と課題

手だてⅠについて

計算法則を理解するために、生徒の設定した数値の意味を考えさせ、平方根の乗法や加法の計算について理解を深めさせることを試みた。

「整数に直せる√の値で計算を例として考えてみる」ことは、√の乗法でも加法についても、生徒Aを始め、多くの生徒たちが積極的に利用している。

見通しをもちやすい数値なので

【資料5】の振り返りや【資料7】の話し合いのように、

習ったことを確実に理解し「こういうふうに考えればよかったんだね。」と様々な所で応用していることが分かる。

手だてⅠは有効に働いた。

手だてⅡについて

友達の数学的見方・考え方のもつよさが明らかになるように

「どうして、この考え方から考えたいって言ったか分かるかな?」や、「これってどのように計算したか分かる?」問い返しをすることを試みた。

【資料3】のように平方根の乗法の計算法則を予想するのに役立つことを確認できた。

また、「平方根の定義」や乗法の公式を再確認し、数学の世界を発展的・統合的に考え、「こういうふうに考えればよかったんだね。」という部分まで確かな理解を引き出すことができた。

手だてⅡは有効に働いた。

手だてⅢについて

新しい課題に対して、既習事項の見方・考え方を生かすために、学習の経過を残す「単元マップ」を作成することを試みた。

単元マップを振り返ることで、平方根の乗法を考えるときに、単の具体的な数値を確認できたので、生徒たちは、スムーズに計算法則を考える活動に移行することができた。

それが、クラス全体が自信をもって考えたり、発表したりすることにつながった。平方根の加法についても計算の確認の仕方について単元マップを振り返りながら確認をしている。

手だてⅢは特に、各授業の序盤において有効に働いた。

今後の課題

抽出生徒Aの様子から「こう考えればよかったんだ」という声や姿はみとることができたが、この抽出生徒の姿が学級全体に広がっているかどうかまで確認することができなかった。

本研究の手だてが学級全体に有効に働いているか検証をしていきたい。

引用文献・参考文献

先行研究

平方根の加法の学習における記号論的連鎖と具象化の分析
J-STAGE

調べていたらこんな論文を発見しました。

理論的にも、子どもの疑問は必然のようですね。

引用文献

・杉江修治(2011).「協同学習入門 基本の理解と51の工夫」.ナカニシヤ出版.p20

参考文献

・加古希支男(2019).「発想の源を問う」.東洋館出版社

平方根 指導案

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