中学校の作図では、コンパスと(目盛のない)定規しか使ってはいけません。
しかし、子どもから、「3センチの正三角形をかきなさいって小学校では問題あったのに、いまの先生の話じゃ、かけない、無理!小学校では、定規で3センチ測って直線をかいたりしたよ。平行四辺形も分度器や三角定規を使ってかいたし。」
と言われました。
小学校でOKだった道具が、中学校ではダメになるのです。
でも、中学校でも、結局、定規で長さを測らざるを得ない状況の問題ってありますよね。
みなさん、子どもにどう話していますか?
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「ユークリッドの『原論』」から
私は、この時にユークリッドの『原論』の公準の話をします。
公準とは、今から作図を考える上で、人間が考えたルールです。(公理ともいいます)
たくさんこれから図形の勉強をしていきますが、このルールに則った上で、新しい決まり事を作ります。
例えば 「円とはどんな図形か」とか、「角の二等分線はどうかくか」というお話は次の公準が成り立つ事を認めた上で、考えていくことになります。
次の5つが公準です。
- 任意の一点から他の一点に対して直線を引くこと
- 有限の直線を連続的にまっすぐ延長すること
- 任意の中心と半径で円を描くこと
- すべての直角は互いに等しいこと
- 直線が2直線と交わるとき、同じ側の内角の和が2直角より小さい場合、その2直線が限りなく延長されたとき、内角の和が2直角より小さい側で交わる。
このルールの上で数学の図形は考える、ということを伝えます。
そのためには、公準1、2から長さの書いていない定規と、3でコンパスが必要ということは分かります。
そして、コンパスと定規さえあれば、垂直な線を引くことができるので、公準4、5を作図するための新しい道具はいらないわけです。
そうはいってもやはりわからない子はいる
あまり良くはないのですが、こんな伝えたかをする時もありました。
2000年も昔だから、正確に長さを測る道具を量産できなかった。
だから、何センチって長さに注目するんじゃなくて、コンパスで同じ長さを測りとる、写し取ることで、数学を発展させようとしたんだよ。
真っ直ぐな棒なら切れば用意できるから、コンパスと定木(昔はこうかきました)で、作図を考えて、建築の設計図とかに応用したんだろうね。
と話してしまった時もあります。
一応最後に、
「これは正しくはないんだけど…」
と付け加えましたが、こっちの方が子どもにはピンとくるみたいです。
抽象概念を伝えるって難しいなと感じます…
まとめ
作図で引っかからない為にも、少し「原論」の話に触れておくと、授業に深みが出てくると思います。
「直線は実は無限に続くものと定義するのも、公準から来てるよ」
なんて話もできるからです。
せっかくなので、数学の歴史に触れながら、楽しく授業したいですね。
反響
僕もユークリッド原論から入りますね。古代の数学の面白さ、考える面白さ。
— 佐々木陽平 (@ssk_yohei) January 21, 2023
ユークリッド原論から入ると中心的な問題として「定規とコンパスだけで何が描けるだろうか?」とおきやすい。 https://t.co/wDpr8Elnvt
というコメントもいただけました!
前提をしっかり確認するのは大切ですね。
授業も組みやすくなります。
必然性も高まります。
コメント