発達障害、教育界だけでなく、一般社会でも一般的になってきました。
妻は、会社員なのですが、結構会社にもいるそうです。
ただ、「病気」と表現するんですよね。
他の人からすると、見た目では区別できないから、病気と捉えるのも分からなくはありません。
教師として、正しい知識を身につけておきたいですね。
今日は、発達障害や知的障害について、まとめてみたいと思います。
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発達障害の特性と理解
まずは、発達障害って何だろうというところから考えてみましょう。
広義
身体障害も含めた(脳性まひなど)発達期に表れる障害全て
法律上の定義(発達障害者支援法)
「発達障害」とは、自閉症、アスペルガー症候群、そのた広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であって、その症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるものとする。
発達障害とは(よくある間違い)
脳機能の障害で、生まれつきの特性であり、親の性格やしつけなどに原因があるのではない。
あらわれ方は変化していくかもしれないが、障害特性そのものは大人になってもずっと変わらずにもち続けるもの。
置かれる環境や、対応の仕方で、落ち着いたり、不安定になったりする。
外見上分かりにくいので誤解されやすい
身体障害に比べて、目に見える形で障害が見えないので、誤解されやすい。
そのため、本人が困っていても、適切なサポートがない状態の人も多い。
苦手な部分について、できて当然と期待される。
そこで努力を求められてもできないことが多い。
そして、できないことについて、「怠けている」「ふざけている」と誤解をされることがある。
そうした悪循環の中で、叱られたり避難されることが多くなり、二次障害(暴力、自傷、対人不安、無気力、鬱など)を招いてしまうこともある。
奥さんの会社の社員がまさに上のような悪循環。
入社1年半たって、
最初はなぜできないんだという𠮟責から始まりました。
ただ、本人はすごくやる気がある。
どれだけ指導をしても、頓珍漢なことになってしまう。
そんなことが1年過ぎたとき
「やる気がないんじゃなくて、なんかおかしい。仕事の仕方を考え直さなければいけない。その社員が仕事をやりやすいように配置もしてあげなければ…」
となったそうです。
障害特性について
ここでは、発達障害それぞれの特性をまとめます。
自閉症スペクトラム症について
以前は、自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー症候群などいくつも診断名がありました。
いまは、これらをすべて統合して、自閉症スペクトラム症といいます。
特に以下のようなところで、特性がみられます。
- 社会性(対人関係)の特性
- コミニケーションの特性
- 興味の偏り、想像力の偏り
- 感覚の特異性
- 時間間隔の特異性
- 総合的な情報処理の困難性
社会性(対人関係)の特性
相手の気持ちを理解したり、楽しみや悲しみなどの感情を共有することが苦手
- 場の空気、暗黙の了解が分からない
- 常識やマナーなど、なんとなく身につけることが難しい(間違って身につけていることもある)
- 人との適切な距離をとることが苦手
- 他人への関心が少なかったり、多すぎたりする。
コミュニケーションの特性
言葉や表情、身振りなどの理解や使用が難しいなど、コミュニケーションが苦手だったり、ユニークだったりする。
- 話が一方的になる
- たとえ話や抽象的な言い回しが分からない
- 言葉の字義通りに受け取る(冗談が分からないなど)
- 独特な言い回し、オウム返し
- 非言語コミュニケーション(表情、ジェスチャーなど)の読み取りが難しい
- 自分の気持ちを適切に相手に伝えることが苦手
興味の偏り・想像力の偏り
想像力に困難さがある。
興味・関心の持ち方や活動の幅が狭かったり、ワンパターンの繰り返しを好む傾向がある。
- 予想、見通しを立てることが苦手
- 目の前にないことの理解が難しい
- ちょっとした変化や想定外のことに弱い
- 切り替えが苦手だったり応用が難しかったりする
感覚の特異性
- 特定の音やにおい、感覚に敏感または鈍感
- 自分が疲れている、空腹であることに気づかない
- 自分のボディーイメージがつかめない
ー 体が使い方が下手、姿勢保持が難しい子が多い。
時間感覚の特異性
- 随分前と少し前、現在を同じように感じる
- 過去の出来事が今、起こっているように感じる
- 今できないと、これからもずっとできないと思ってしまう
- 時間の経過を感じにくい
ー たくさん勉強したから、そろそろ授業が終わり。と思いにくい(時間が突然やってくる)
総合的な情報処理の困難性
- 全体を捉えにくく、部分だけを見てしまう
ー 顔の表情を部分(口だけなど)に注目して、全体を捉えにくいこともある - 状況全体(文脈)を見ることが難しく、大事なことを直感的に取り出せない
- 雑音を含め、周りの音は同じ音量で聴こえる
自閉症スペクトラム症の支援のポイント
- 言葉がけはシンプルに、具体的に
- 落ち着ける環境(場所)を用意する
- 視覚的手がかりを提示する(ホワイトボードに書くに箇条書きでなど)
- できることを中心に先の見通しを立てる
- ソーシャルスキルトレーニングを導入する
- 子どもの意見や感想を丁寧に聞く
ソーシャルスキルトレーニングについては、この本を使っています(中学生向き)
注意欠陥性多動性障害(ADHD)について
- 不注意
- 多動性(過活動)
- 衝動性
この3つのなかのひとつないし、複数現れます。
さらに、その特徴によって以下のタイプが現れます。
- 不注意優勢型
- 多動ー衝動性優勢型
- 上記の混合型
多動・衝動性優勢型の子どもは、目立つ行動が多く、教師も困ることが多いので、気づかれやすい。
不注意優勢型は、問題が目立たない場合も多いので、気づかれることが遅れることもある。
以下では、それぞれの特性です。
不注意
- 注意集中のコントロールが苦手
- ちょっとした刺激で注意がそれる
- うっかりミス、忘れ物が多い(漢字の点を忘れる、計算ミスが多い)
- 何かをしている時に、別のことが頭に浮かぶとそれに気を取られて何をするべきか忘れてしまう
- 話をしていても、外で音がするとそっちが気になる
多動性(過活動)
- 落ち着くことが苦手
- じっとしていられない
- 順番を待つことが苦手
- しゃべり出すと止まらない
- 姿勢が悪い
- 家、外出先など 場所や状況によらず多動
衝動性
- よく考えて行動することが苦手
- 優先順位をつけられず、計画を立てることが苦手
- 思ったことをすぐにしゃべる
- 熱しやすく冷めやすい
- 不快な感情が生じても抑制できない(カッとなりやすい)
注意欠陥性多動性障害(ADHD)の支援のポイント
繰り返し叱責されたり、努力不足だと誤解されたりと失敗体験が蓄積されると、ひきこもりやうつ、非行などの二次的な問題が起こることもあります。
以下のようなことに注意をしてみましょう。
- 注意力への配慮
気が散らないよう、視覚・聴覚からの刺激を少なくする。 - 多動性への配慮
授業中にプリントを配る係を任せるなど、体を動かせるような役割をもたせる - 衝動性への配慮
動き出す前に「走らず歩くよ」などと声をかける - 情緒面への配慮
認める・褒めるときはみんなの前で。注意は1対1で
学習障害(LD)について
一般的な知能の遅れはなく特定のことだけができない
特定の能力の習得や使用(字を読み書き、計算、聞く、話す、推論など。)が苦手・困難
具体的には
- 目から入ってくる情報処理がスムーズに行えない
- 図形や記号、似たような感じが理解・区別できない
ー もやがかかったふうに見えると表現する人も - マスの中に字を書くことができない
- 読み書きに人一倍努力が必要で、疲れやすい 等
LDの中にも、以下のように区別されることもある。
- 読字障害
ー 文字が反転して見えたり、まがって見えると言われている。そのために読み間違えたり、読んでいる場所が分からなくなったりする。 - 書字表出障害
ー 左右反転した鏡文字になったり、漢字を覚えて書くことが難しい
ー 単語を構成する部首やパーツの並べ方を覚えることや、文法的に正しい文を書くことが苦手 - 算数障害
ー 数の大小の理解が難しいなど数概念の理解や、加減乗除などの基本的な数の操作、文章問題に式を置き換えるなどが苦手
子どもの様子の例
- おしゃべりはできるが、教科書の文章は読めない
- 文章は読めるが意味が捉えられない
- 文字の形が整わず、書いた本人も読みにくい
- 計算や推論が苦手で時間がかかる
学習障害(LD)の中の約80%が読み書きに困難さを抱えていると言われています。
学習障害(LD)の支援のポイント
- 学ぶ楽しさを伝える工夫をする
- 得意な面から力を伸ばす
- できるようになったことを定期的に子どもと確認する
- 反復練習(ドリルなど)をやめ、覚え方のコツなど本人に合った学び方を認める
- 積極的に支援ツールを活用する。
愛知県の総合教育センターでは、「自作教材・教具・支援ツール」について、公開されています。
参考になるかもしれません。
学習障害の中にディスレクシア(読字障害)があります。
こちらに詳しく解説記事を書きました、
よかったらご覧ください。
知的障害の特性と理解
発達障害から一度離れて、知的障害についてもみてみましょう。
知的障害の判断基準
- 知的能力が低いこと
- 適応能力が低いこと
- 発達期(18歳まで)に表れていること
知的障害は法律上定義されておらず、いくつかの機関(WHO、アメリカ精神医学会など)が独自で判断基準を出している。
基準により違いがあるあ、どの基準も知的能力の低さだけでなく、社会生活での不自由さを感じたときに障害に当てはまるということが書いてある。
知的能力が低いこと
知的な遅れはあるかどうかは知能検査で判断する。
私の住んでいる自治体では、知能検査結果(IQ)と日常生活でどのくらい助けが必要なのかなどを保護者から聞き取り、総合的に判断し、療育手帳の区分を決めている。
IQに限っていえば、75を下回ると、療育手帳が発行されることが多い。
適応能力が低いこと
社会生活に関わる能力が道連零位の子どもと比べて低いかどうかで判断される。
発達期に現れていること
何が原因で知的障害になったのかではなく、発達期(18歳まで)に表れているかどうかで判断される。
※発達期を過ぎてから知的能力や適応能力が低下しても、知的障害とはみなされない。
知的障害の特徴
- 言葉の発達の遅れ
- 物事を理解するのに時間がかかる
- 何かを身につけるまで時間がかかる
- 初めてのことや変化が苦手
- 自分で判断することが苦手
社会生活において大切な2つの能力
適応能力〔集団生活で発揮される力〕
- 集団の中でルールを守る
- 集団のなかで自分の役割を担当する
- 人との円滑な関係を築く
知的能力〔知的な活動のために必要な力〕
- 自分の考えをまとめる
- 予想や計画を立てる
- 論理的に考える
※知的能力=勉強(読み書き・計算)だけではない。
学習環境の基礎的環境整備と合理的配慮(2023.08.02追記)
今は、子どもが学習に対して前向きに取り組めるようにするために、合理的配慮をすることが義務になっています。
そのために環境整備をすることも大切です。
一度それぞれの言葉について確認をしてみます。
合理的配慮
- 障害のある子供に必要かつ適当な変更、調整を行うこと
- 障壁を取り除くために、負担が重すぎない範囲で個別に配慮すること
基礎的環境整備
こちらは、共生社会の担い手を育むという考え方です。
共生社会とは、十分に社会参加できるような環境になかった障害者等が積極的に参加・貢献することができる社会。
誰もが相互に人格と個性を尊重し支え合い、人々の多様な在り方を相互に認め合える全員参加型の社会のことです。
共生社会を目指すことは我が国において最も積極的に取り組むべき重要な課題です。
そのために学校では以下のことに取り組みます。
- 合理的配慮の基礎となる全体の環境整備
- ユニバーサルデザインの考え方も考慮しつつ、進めていくことが重要
小学校の学習指導要領の前文には、以下のように書いてあります。
これからの学校には(略)、一人一人の児童が,自分のよさや可能性を認識するとともに,あらゆる他者を価値のある存在として尊重し,多様な人々と協働しながら様々な社会的変化を乗り越え,豊かな人生を切り拓ひらき,持続可能な社会の創り手となることができるように
小学校 学習指導要領 全文(P15)
することが求められる。
そうなるように環境を整えていかなければいけないのですね。
ここまで書いてみましたが、分かりにくいので、具体的な授業場面で書いてみます。
学習場面で子どもが不適応を起こす原因はなんでしょうか
「何をすればよいか分からない」「やり方が分からない」「練習していないからできない」「やる気がない」といった要因が考えられます。
一次的支援として、学級全体に薄く広く支援をする手だてを考えます。
黒板周りの掲示を少なくして集中できるようにするといった環境を整備するのことにあたります。
また、黒板のかき方など、授業の構成方法などをみなおすのも含まれます(授業のユニバーサルデザイン)
これが「基礎的環境整備」です。
そして、二次的支援として、学級の中での個別的な配慮や支援をするのが「合理的配慮」です。
例えば、個別に指示をするなどはもちろん、電卓を使えるようにするとか、その子にあった配慮や支援をすることが「合理的配慮」にあたります。
学校は変わらなければならない
これまでの学校では、障害のある子どもが学校に合わせてきました。
これからの学校は、多様な子どもがいることを前提に、どれだけ変わっていくのかかが問われています。
そして、誰もが生活しやすく、学びやすい環境づくりが共生社会の担い手を育むことにつながります。
学校全体でこの考え方を共有し、目指す必要が出てきます。
個別の支援の手だての考え方については、こちらにまとめました。
最後に
今回は、障害の大まかな特徴をまとめました。
ただ知識があると言って、実際の支援の場では一筋縄ではいかない、頭を悩ませることがたくさんあります。
診断名があったとしても、育ってきた環境や性格、特性の現れ方もみんな違います。
大切なのは診断名にとらわれないで1人1人を知り、関わっていくことです。
⇓ぜひこちらの記事をご覧ください⇓
参考
特別支援の研修会で勉強させていただいたことをまとめました。
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