前回の記事では、障害の特性について、基礎的なことをまとめました。
今回は実際に配慮の必要な子どもに対してどう関わればいいのか。
そのきっかけやヒントについてまとめてみたいと思います。
⇓次の記事⇓
はじめに
発達障害や知的障害のある子どもは、前回の記事で書いたように、様々な特性や特徴があります。
その他にも
- 診断はないものに、発達障害傾向の子(グレーゾーン)
- 身体障害や医療的ケアの必要な子
- 発達がゆっくり、年齢よりも幼い等と感じる子
- 外国籍など言語や宗教上で配慮の必要な子
- 行動や言語が気になる子
配慮の必要な子どもはたくさんいます。
そんな配慮の必要な子どもたちは集団生活を送る中で、不安や混乱など様々な思いを抱えています。
- 先生の言っていることが理解できない
- 今、何をすればよいのか分からない
- なんでうまくできないんだろう…
- 自分は他の子と違うのかな、変なのかな…?
- また叱られた。いつも叱られてばかりだ
- ごそごそするのが我慢できない。つい動いちゃう
教師は配慮の必要な子どもに対して、安心して集団生活を送ることができるように支援の手だてを考えていく必要があります。
関わり方の工夫 その1 「分かりやすい環境を整える」
分かりやすい環境を整える
配慮の必要な子どもは、情報が多い、整理されていない環境だと混乱したり、気が散ったりします。
そのため、情報の質や量、提示の仕方に工夫が必要です。
集団生活の中で、子どもにとって分かりやすい、見通しがもてるという状況を作ることで、「分かる」「できた」と自信につながります。
また、配慮の必要な子が「分かりやすいこと」は、他の子どもにとっても「分かりやすい」につながります。
結果、クラス全体の「わかる」「できた」につながることになります。
「分かる」「見通しがもてる」環境とは
- 情報が整理されている
- 時間が分かる(あとどのくらい、いつ終わるのか)
- 今、何をすべきかが明確になっている
- 流れや手順がわかる
- 使い方、やり方が分かる など
注目すべきことへの集中を促す工夫
- 刺激の少ない環境設定
ー 机の上に不要な物を出さない
ー 前方の席にする
ー 壁を向いて取り組む など - 掲示物や制作を飾る場合は視界に入りにくい場所に掲示する
ー 学級目標を前面黒板に貼らずに、教室後方に貼るなど - 物の場所が決まっている
ー 教室全体が整頓された状態にする
視界にはいるところに物や人がいると気が散る子もいます。
活動に集中できるように環境を変えてあげましょう。
⇓「分かる」「できた」と感じる授業についてはこちらにまとめました⇓
見通しがもてるようにする工夫
- 手順を示す
ー イラストや実物を用いて、工程を具体的に掲示する
ー 朝の支度の流れを示す など - スケジュールを掲示しておく
- タイムタイマーを活用する
一日のながれより、一つ前、今の活動だけをしらせるほうが分かりやすい子もいます。
個々の状況に合わせることが一番大切です。
具体的に示す工夫
- 片付ける(入れる)場所を示す
ー イラストや写真を用いて、どこになのをしまえばいいか示す) - 自分の物だと分かるようにする
ー 名前、マークなどを貼る - 並ぶ、集まる位置を明確にする
ー 足形などを書き並ぶ場所を示す。(最近はスーパーとかでも見かけますね) - 曖昧な表現は避ける
ー ちょっと、あと少しは×
ー 何分後、あと何回かと時間や回数などを伝えます - 役割分担を明確にする
ー 机を運ぶ、ほうきで掃く - 自由時間や空白の時間にやることを決めておく
ー本を読むか絵を描くかと選択制にしてもよい
子どもの中には、「自由」「何をしたらいいか分からない時間」が苦手な子もいます。
具体的にやるべきことを示すと安心できることもあります。
支援を考える際のポイント
支援を考える際には子ども目線、子ども視点で考えることも大切です。
- 子供に視界に入りやすいかどうか
- 身支度をする導線では、何が子どもの目に入るのか
- 必要な物が手に取りやすい場所にあるか
- 提示した情報は子どもにとって分かりやすいものか
子供は成長していくため、成長に合わせて工夫する内容も変化させていくことも大切です。
関わり方の工夫 その2 「不注意・衝動性への対応」
不注意・衝動性への対応
忘れ物やなくしものを減らす
- いつも持ち歩くものは袋やケース等にひとまとめにする
- なんでもいれてよい箱などを決める
- 物をしまう場所をしっかり決める
ー ひとつひとつの物の位置を写真などを用いて提示する - 自分の持ち物であると自覚しやすい工夫をする
ー 記名、マーク、シールなどを貼る
適切な行動を褒める
- 注意されたことを頭の中にとどめておくことが難しいため、叱られて行動を修正することが難しい
- 適切な行動ができたときに褒める
- 「ダメ」と伝えるよりも正しい行動、してほしい行動を伝える。
落ち着きはない場合には…
- 動くことで話を聞こう、活動しようと集中している可能性が高い
ー 体の動きや落ち着きのなさは注意し過ぎないようにする - 椅子に座る場合、姿勢保持が困難で崩れやすいが、話を聞いていればOKとする
- 動ける機会を時々作る
ー プリント配付や回収の手伝いなど - 衝動的に話し始めたり、動いたりする場合には、冷静に対応する
ー 大げさに反応すると、その行動が強くなることはある
関わり方の工夫 その3 「学習障害への対応」
本人にとってわかりやすいものを見つける
- 文字の大きさ
- 行間、フォントの種類
- 縦書き、横書きのどちらが読みやすいかなど
特に、フォントについては「UD教科書体」がでてきました。
見やすいという子どもも多いため、試してみるのはいかがでしょうか。
windows10から標準装備になっているみたいです。
一度確認をしてみてください。
上手く書けていなくても多少のことはスルー
- 上手くできていないことは本人が一番苦しんでいる
- やりたくないという気持ちを少しでも減らす工夫を
「先生に○をもらえた」「できた」という経験が大切です
代替手段を提示、活用する
- 計算機を使用する
- PC入力をする
- レコーダーを使用する
- 黒板を写真に撮る
一人一台タブレットが配付されたので、上記のことはすぐにでもできそうですね。
使う物を工夫する
- 読みやすいように教科書をマーカーなどで色分けする
- どこを読めばいいか分かるような道具を使用する
- 大きさなどに配慮した枠や罫線のノートなどを活用する
リーディングトラッカーなども、もしかしたら助けになるかもしれません。
関わり方の工夫 その4 「苦手な感覚への対応」
安心して取り組むための配慮
苦手な感覚(感触)については、繰り返すことでできるようになるわけではない。
本人にとって苦痛でつらい経験になってしまうため無理にやらせず、他の方法を探ることが一番大切です。
例えば、粘土の感触が苦手な子どもには、
- 他の子がやっている様子を見てみる
- 直接触ることなく遊べる工夫をする
また、感触だけでなく手が汚れることが嫌なお子さんの場合には、手を拭くことができるようにタオルを置いておくなどの工夫で参加できることもあります。
人それぞれです。
子どもの将来を育てる(キャリア教育) 2023.07.31追記
ここまで関り方について書いてきましたが、卒業後、就職のことまで考えて指導をしていかなければなりません。
発達障害のある人は就労後も困難を抱えて暮らしていきます。
障害者職業総合センター実施の「発達障害のある人の就職後1年時点の職場定着率」に関する調査」(2017)によると、
・障害者求人では79.5%。
・一般求人(障害非開示)だと33.3%しか定着しなかったというデータがあります。
つまり一般雇用で職場に定着できなかった人が70%近くいるということです。
いかに仕事を続けるというのが難しいことが分かります。
職場定着が難しい要因として
- 職場での業務遂行面での困難
- 対人、コミュニケーション面の困難
- 仕事に影響する生活面の困難(朝、職場に遅刻する。仕事をすると私生活がめちゃくちゃになるなど)
が考えれます。
関連する困難が学校段階から生じている場合があります。
学校の段階から、自信の特徴に即したかかわりを受けつつ、自分ができること、得意・不得意とすることなどを客観的な評価を踏まえて整理しておくことが重要です。
一般的に就業を安定させるために学校段階では以下の力を高めたいです
- 人間関係形成・社会形成能力
- 課題対応能力
- キャリアプランニング能力
- 自己理解・自己管理能力
特に「自己理解・自己管理能力」では、子どもが「できること」「意義を感じること」「したいこと」について社会との相互関係を保ちつつ、今後の自分自身の可能性を含めた肯定的な理解に基づき、何をすべきか主体的に行動するのが大切です。
また、自らの思考や感情を律し、かつ、今後の成長のために進んで学ぼうとしていく姿勢が大切になります。
「自己理解・自己管理能力」を伸ばすために
- なりたい自分について考える
- 自分のよい所、課題となる所を理解する
- 自分に必要な対応を理解する
- 成功体験の積み重ね、自信をもつ
- 自己肯定感をもつ
という5つの段階を踏んで、「自己理解・自己管理能力」を高めていきます。
自己肯定感を高めるために、
- 教師との関係を築く
- 学校での学習や生活場面を振り返る
- 自分の言動や気持ち、感情について一緒に考える
- 自分を客観的にみることができるように支援する
- SSTで必要な対応を理解できるようにする
- 集団の中で成功体験をつむことができるようにする
ことを教師としてしかけていかなければなりません。
そうすることで、社会に出ても対応できる子どもを育てることができます。
SSTについては、こちらの本がとても使いやすいです。
最後に 子どもとの関わりで大切なこと
人は褒められると嬉しい気持ちになります。
褒めること=「あなたを見ているよ」のサインです。
子どもは褒められることで、「次も褒めてもらいたいから頑張ろう」と良い行動が増えてきます。
そして、褒められることで、子どもが自分のよい所に気づき、自信が出てきます。
⇓こちらに詳しくまとめてあります。ご覧ください⇓
その子に合った支援を探して、その子が過ごしやすい環境を整えたいですね。
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