平面図形の、1時間目。
教科書の多くは直線や距離の定義になっています。
ここ、読んでサラッと飛ばしていないでしょうか?
前の記事にも書きましたが、図形の授業で定義はとても大事です。
そこが疎かになると、トポロジーや非ユーグリット幾何学の時に、そもそもの定義で混乱します(自分はそうでした)
大学まで数学とお付き合いする子どもは少ないでしょうが、やっぱり定義はしっかり指導しておきたいですね。
講義になってしまいがちな分野ですが、少しでも子どもが手を動かして、学べるように授業を考えてみました。
皆さんも紙を隣にご用意して一緒にやってみてください。
⇩原論を使った導入も考えました⇩
曲線と直線、直線の分類
指示1「ノートの真ん中辺りに、点をかいてください。この点の右上にAと書きます。これを、点Aとします。」
指示2「点Aを通るように、線をかいてください。(質問があったら)何本書いてもよいですよ」
これで、子どもに作業させます。
反応例としては、次の4つになります。
・曲線
・直線
– ノートはみ出すまで書いた直線
– 点Aから伸ばしている半直線
– ノートの途中で直線をとめている線分
子供を指名して、4種類の線を黒板に書かせながら類別していきます。
この時に、
「先生は、線をひきましょうとしか言ってないからいろんな線がかけるよね。よく聞いてたし、よく考えたね」
と褒めながら定義とともに紹介していきます。
特にノートを飛び出すぐらい直線をかいた子どもを取り上げ、
「これが数学の【直線】だよ」
と価値づけます。
へそ曲がりの子がよく書くので、褒められてビックリすることでしょう。
結構喜びます。
2点間の距離はどれ
今度の指示は
指示3「ノートに点をふたつ離して書きます。それぞれの点を点B、点Cとします。」
指示4「点Bと点Cを結ぶ線を引きましょう」
と指示をします。
先の活動をしているので、点BC間を直線だけでなく、曲線で回り道しながら書く子もいます。
黒板に、2点間を結ぶ曲線や直線を書きながら、
「ひとつだけ、特別な線はない?」
と聞くと、きっと直線を選ぶことでしょう。
2点間の最短距離を結ぶには直線しかないからです。
「この直線で結んだ長さを点Bと点Cの距離と言うんだよ」
と定義します。
ここで、真面目に直線を書いている子どもにもスポットを当てます(笑)
閑話休題
次の時間には直線の復習もします。両手で如意棒を持っているジェスチャーを生徒の前でします。
「先生が今持っているのは直線ね。フン!」
と振り回す動作をします。
頭を屈める動作をした生徒は褒めてあげましょう。
直線がどこまでも続いていることを、よく覚えています。
定義が変わると数学の世界が変わる
ここまで話したところで、
「この直線の定義は高校までの話です。古代ギリシアのユークリッドさんの時代。直線は、ずっとこの定義で話を進めていました。
ただ、19世紀なので、200年くらい前に-このままだと困るぞ!と気づいた数学者が出てきました。
どんな時だと思いますか?」
と、非ユークリッド幾何の話もしておきます。
こんな例え話をします。
「今から、先生は校庭に真っ直ぐ運動会で引く白線を引きます。これって直線?
そうだよね、真っ直ぐどこまでも引いていけば直線だよね。
じゃあ頭の中で考えてね。
校庭の壁も壊して突っ切って、海の上も、真っ直ぐ線をひけたとして、ずっと直線をかいていこう。
どんなことが起こる?」
ここまで聞くと、
「地球を一周して、学校に戻ってくる?」
と子どもが言います。
そこを全体で共有したあと、もう一度クラス全体に、
「今かいた白線って、本当に直線?」
と聞くと、
「宇宙から見たら円になってる!」
と子どもが言い出します。
「ユークリッドさんの話だと、実はそんな矛盾したことが起こるんだよね。
こういう大きな世界で図形を考える学問を数学でも、非ユークリッド幾何学と言うんだよ。」
と紹介します。
「実はもう、みんな小学校の社会ででこの勉強をしてるんだよ。
ユニバーサル横メルカトル図法で、アメリカと日本の飛行機の飛ぶ航路が、北に曲がって書かれていて、直線じゃないんだ!って思ったことない?
あれは、地球という球で考えると、日本とアメリカの最短距離があの曲線になるんだよね。
ほら。今話した非ユークリッド幾何学と関係してるでしょ」
というと子どもはハッとします。
そうやって、数学の世界を広げてあげるのも重要だと私は信じています。
最後になぞなぞを出します。
「北極点から、南に10キロ、東に10キロ、北に10キロ進むとどこにいるでしょう?」
ユーグリット幾何学で考えるとどうなるのかな?非ユーグリット幾何学で考えるとどうなるのかな?
まとめ
こんな話をしても子どもは案外混乱しません。
ちゃんと、「中学校では、ユークリッド幾何学で話を進めていくよ」とだけは伝えておきましょう。
原論の話もすると、さらに理解が深まります。
ぜひ合わせて話をしてあげてくださいね!
参考
前半の「点を線で結ぶ話」は、岐阜聖徳学園大学の玉置崇先生の講演を参考に、作らせていただきました。
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