初任の頃、教科書の指導書通りの授業をしてました。
とにかく、教科書の発問で毎日の授業をこなすので精一杯。
ある日、先輩の先生から一言。
「毎日よく頑張っとるね。
もし、もっと授業を上手くなりたいと思うなら、教科書を教えるんじゃなくて、教科書で教えるように意識するといいよ。
まずは子どもが教科書を開かないようにしなさい。」
と言われました。
とりあえず言われるがまま、教科書は開かせないようにして、授業を始めました。
3年程かかりましたが、確かに授業が変わりました。
その時は小学校に勤務していましたが、中学でも、教科書開かせずにやってます。
ありがたいのは、
「昔よりも分かるようになってきた。」
という生徒の言葉です。
教科書を教える意味を、もう一度考えてみたいと思います。
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子どもと問題の出会いが変わる
昔やっていたのは、こうです。
「教科書、〇ページを開いてください。問6です。一緒に読んでみましょう。せーの…」
これ、悪くは無いんですけど、読んで終わりなんです。
普通なら問題を読んで、「あれ?」、「おかしい」と子どもたちは、疑問を持ってほしいのですが、まったくそうなりません。
先生は「読みましょう。」と言ったんですから。
最近は、生徒も教師もひと手間ですが、1文ずつ、確認しながら書いています。
もちろん、教科書は開きません。
こんな感じです。
「太郎くんの家から駅まで2キロあります。…いいな?
弟は、分速60mで家から駅に向かって出発しました。 ここも分かる?」
こんな感じで1文ずつ確認しながら書いていきます。
前の授業で、面白い1幕がありました。
この問題の続きなのですが、ある子が次の1文を書き間違えて一人で笑ってるんです。
この子は以下のように書いていました。
「その10分後、弟の忘れ物に気づいた姉は、分速240mで弟を追いかけるでしょうか?」
あえてのっかって同じように書くと、クラス全体で、「知らんがな!」と総ツッコミです。
生徒に
「なんでこれ、数学の問題にならないの?」
と尋ねると
「お姉さんの気持ちは分かりません」
「そもそも、追いかけないと問題始まらないじゃん」
と、出てきました。
ここで子どもにもってほしい感覚は、この問いでは、誰もが同じ答えを出せる問題になっていないという感覚です。
じゃあどうすればいいのか、みんなで考えることができます。
こんな風にただ読むだけでは得られない問題にとの出会いを演出することが出来ます。
もちろん、この後
「姉は追いかけました。弟が駅に着くまでにたどり着けるでしょうか?」
と文章書きましたよ(笑)
求めるものは何?
次の問題はこうです(数値適当なので、答え出ないかも)
「あめを何人かに配ります。
5個ずつ配ると、4個あまり、
7個ずつ配ると、2個足りません」
ここで、問題を書くのをやめます。
そして、
「この続きはなんと書くでしょう?」
と尋ねます。
生徒からは、
- あめの数を求めましょう
- 人数を求めましょう
どちらも出てきます。
どちらをXと置くかで方程式の立式が変わってきます。
教科書では立式が簡単な「人数を求めましょう」と書いてありますが、それでは、なんであめの個数は求めないの?という疑問が残ります。
むしろそういう疑問を持てる生徒を育てたいですね。
だから、こんなふうに問題を提示し、自由にやらせました。
結局、あめの個数をxとすると、立式が困難なので、人数を求めたあと、あめの個数を出しました。
授業後も果敢にあめをxにして、立式できないかと頑張っている生徒もいました。
問題を先に提示してては、出ない流れですね
自分で問題をつくる
中学校2年確率の授業です。
教科書には、
「5本の内、当たりが2本のくじ引きを2人で引きます。あとに引く人の方が当たりやすいでしょうか?くじは元に戻さないものとする」
と書いてあります。
そこで、取り出しで授業している生徒以下のように授業を行いました。
タイトルは「残り物は福があるは本当か?」
これだけ書きました。
生徒に、
「これって本当?」
と聞くと、きっぱり
「そんなことないよ。」
と言われてしまいました。
「じゃあ確認してみよう」
と授業の始まりです。
C くじ引き
T 何人でやる?
C 4人
T いきなり頑張るね。書ける?
C コインでも3つだったから難しくしたかも。2人にしていい?
T もちろん!簡単なとこからは大事だね。何本くじ入れる?
C 2本
T 当たりは?
C 1本
T じゃあやってみよう。
C 簡単じゃん。どっちも当たりを引くのは1/2
T えー、そりゃくじが2本だからでしょ。ほかの場合でもそうかな?。
C じゃあくじ5本、当たり1本T やってよう。
C (樹形図かいて)やっぱり同じ
T そう言えば、無意識にくじ戻してないけど、それでもいい?
C あー、くじ戻した場合もいるのか
T それって(確率)いっしょ?
C 前の人が当たり引いても、後の人当たり引けるよね…違うかも
T やってみよう
C やっぱりいっしょ
T そしたら?
C もしかして当たり2本にしてもいい?それか人数を3人に増やしても?
T もちろん!やってみて!
C 一緒だ…
T じゃあ調べたことからどんなこと言える?
C 結局どんな条件でも残り物に福があるって嘘じゃん!
T でも、4人になったり、くじの数変えたらわからんかもよ…(笑)
C それは、もうできません!
T 高校でさらに詳しく勉強するから頑張ろうね
さて、いかがでしょうか?
これのいい所は、最初(少し方向づけしましたが)最初の問題は二本のくじに引く人2人と、1番簡単な例から始めていることなんです。
そこから、少しずつ生徒のできる範囲で問題を複雑化しています。
最後には、(とりあえず)どんな場合でも残り物には福がない!ということに気づけています。
これが、教科書通りに問題を提示してたら、この問題を変えて、さまざまなパターンで検討しようなんて子どもの意欲は削がれます。
問題を見せずに一緒に作ったからこその授業になりました。
まとめ
皆さんも、教科書で教えてみませんか?
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