愛知教育大学 青山和裕先生の講演を聞いてきました。
演題は「Society 5.0時代の統計教育のニーズと教材・実践例について」でした。
急激に起こっている社会構造の変化とともに、統計分析が非常に重要になってきます。
社会構造の変化と、統計教育がなぜ関連してくるのか、一緒に考えていきましょう。
今回、授業を作るにあたって、身の回りのデータを収集できるサイトも載せました。
ぜひご活用ください。
Society 5.0ってなに?
今の人類社会って、バージョン5.0に入ったって知ってますか?
私も、2年前くらいに、学校のポスターでこの言葉を見るようになりました。
これって、まず何だろうという話です。
歴史(古墳時代とか、江戸時代)の時代の分け方ではなく、産業や社会の在り方で人類の歴史を振り返ったときに、5つに分けられるよ。というものだそうです。
Society 1.0 は「狩猟を主に行っていた時代(石器時代)」
Society 2.0 は「農耕を主に行って社会を成り立たせた時代(弥生時代~1600年ごろ)」
Society 3.0 は「工業が中心になった時代(産業革命以後)」
Society 4.0 は「情報(インターネット)を使うようになった時代(1970年?以後)」
Society 5.0 が「今直面している新たな時代です」
※1「内閣府HP」より
なるほど、狩猟から始まり、農業で生活が安定する。
工業による分業化で、社会が発展し、近代の人間社会が形作られました。
そして、インターネットが発達し、社会の変化スピードは格段に速くなりました。
昔はパソコンでインターネットとつながっていましたが(昔は、電話代高かったですね)、いまや一人一台もっているスマホ・タブレットで、だれもがいつでも世界中の人と自由にコミュニケーションが取れるようになりました。
学校も、一人一台タブレットを持っているのが当たり前になったんですから、すごい変化です。
じゃあ一人一台、端末を所持しているのが当たり前の今日、社会はどんな変化が起こっているのでしょうか?
内閣府はこんなスライドを用意しています。
※2 「内閣府 Society5.0の実現に向けた教育・人材育成に関する政策パッケージ」より
簡単に言うと、一人一台タブレットを持つことで、今までにはなかったサービスが展開できるようになった。(例:カーシェア、Uber Eatsなどの宅配サービス、自宅勤務など)
そして、インターネットを通して、誰とでも繋がれる世の中になった。
新しいアイデアもでてきた。
googleといった、分野を問わない超巨大企業もでてきています。
日本には昔からトヨタ自動車がありますが、新興企業のgoogleに抜かれてしまいました。
社会はこれからどんな風に変化できるか、昔よりも予測が難しくなりました。
だからこそ、日本としても、社会の在り方をどんどん変えて、国際競争力を付けていかなければいけないねって話です。
いまや、インターネットで、ありとあらゆるデータが集められています。
卒論なども、Googleフォームを使って不特定多数から集めることも見られます。
大量にデータが蓄積されるようになったsociety 5.0。
我々はデータとの付き合い方を考える必要が出てきました。
今までは鉄や石油といった有形の資源が国の力でした。
ただ、これからの未来は情報が鉄や石油と同等、またはそれ以上に価値が出てくるのです。
資源の少ない日本にとって、このチャンスを逃す訳にはいかないのです。
Society 5.0に関連する教育政策
新しい時代には新しい教育が必要です。
国としてはどんなことを目指しているのでしょうか。
内閣府より、こんな提案がされています。
※3 「Society5.0の実現に向けた教育・人材育成に関する政策パッケージ」より
先が見えない社会だからこそ、何がどこで役立つか分かりません。
だからこそ、
- 「自分でいろいろ試して学び作っていく探究力」が必要になること。
- 多くのひと協力して新しいアイデアを創造する「協働力」。
- 自分の興味をとことん突き詰められる「主体性の重視」。
が求められています。
ちなみに、国家としても統計教育に重点を入れています。
※4 内閣府政策統括官(2019)「AI戦略2019」
現在、滋賀大学でデータサイエンス学部という学部を新設されました。
これから、他大学でも統計・データサイエンスの学部が増えることが予想されます。
京都大学でも、「データ科学イノベーション教育研究センター」が設立され、データサイエンスに力を入れていることが分かります。
データを分析せよ
統計とスポーツは切っても切れない関係になっています。
ピンとくるのは野球じゃないでしょうか。
打率、防御率などは、ニュースでもでてくる、基本中の基本の指標ですね。
他にもWHIP、OPSなど、マニアからすれば、それだけでお酒が飲めるほど、さまざまな指標で解析されています。
身近な例としてだと、「コンビニの700円くじ」。
これも統計を取った上で、展開されて定着した有名なキャンペーンです。
いろんなコンビニがありますが、どのコンビニも700円を超えたら、くじをひけるというキャンペーンを張っていますよね。
コンビニごとに設定金額が違ってもいいはずなのに(500円のキャンペーンがあったら、きっと僕はそっちのコンビニに行きます)なぜ、軒並み700円なのでしょうか。
それは、コンビニの客単価(1回の購入金額平均)が650円前後なんだそうです。そこで、もう一つ、商品を購入してもらって、700円にのせてほしいというコンビニの思惑から、700円という設定になっています。
POSレジが導入されてから、20年ほどたった後、あるコンビニ社員が法則を見つけたんですね。
言われてみれば、簡単なことなのですが、それが、20年も見つからなかったことに、データ解析の奥深さがあります。
データに批判的であれ
よく、ネット商品で、「商品満足度 95%」って見たことありませんか。
でもよく考えてください。こんな高い数値がでるって不思議に思いませんか。
もちろん、購入した人の95%が本当に満足している商品もあるでしょう。
ただ、アンケートをとる時に細工をしている場合もあります。
たとえば、「2回商品を買ってくれたお客さんにだけアンケートをとった」という条件にするとどうでしょうか。
そうすれば、満足度が高いのも納得ですよね。
著作権の関係で上げられませんが、ニュースなどで提示されているグラフをみると、これってどうなの?と思うものもいくつかあります。(検索をかけると出てくると思うのでぜひ調べてみてください)
そういうのを批判的に考察できる力を、ぜひつけて社会に送り出したいですね。
データを集められるサイト (2023.07.31 記事を追加)
e-start
まずは、政府は統計をまとめているものを統括して公開しているポータルサイトです。
人口の変化や、公務員の給料の増減まで、いろんなデータを見ることができます。
見方は簡単で
HPにアクセスすれば、どんな分野の統計を探したいか、分類されているので、順番にクリックしていけば、統計データまでアクセスできるようになっています。
日本全国だけでなく、都道府県別、市町村別の主要データなども確認できます。
RESAS 地域経済分析システム
こちらは、地域経済に関する官民の様々なデータ及びそのグラフを地方公共団体単位でテーマごとに集約したEXCEL形式のファイルをダウンロードできるサイトです。
例えば、自治体ごとの人口増減だったり、地方財政だったり、そんなデータを見ることができます。
EXCEL形式でダウンロードできるので、こちらでデータを加工しやすいのも特徴です。
気象庁
1,2はどちらかというと社会で取り扱うことが多いかもしれません。
気象データなら、教科書などでも取り扱いがあります。
「自分の住んでいる地域は、本当に地球温暖化をしているといえるのか」
と発問して、考えさせてみてもおもしろいかもしれませんね。
「気象庁」→「各種データ資料」から「EXCELのCSV形式」でダウンロードができます。
まとめ
ヒストグラムをかける、代表値を計算できるだけではなく
・出されたデータを分析できる
・データを批判的に考察し、考える力
を身につけさせたいですね。
また、授業を構成するとき、生徒が興味をもって考えられるようにするために、教科書のデータだけではなく、生きたデータを使いたいものですね。
ただ、代表値などを「習う・慣れる」に重きを置く場合、生きたデータを使うと、生徒が混乱する場合もあります。
実際にあるデータ・加工したデータ、どちらも適切に使って、生徒の「データを活用する力」を伸ばしていきたいですね。
授業案
こんな授業をやってみました。
ぜひご覧ください。
【統計に関する授業についてはこちら】
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