初めて担任をもったころ、隣のクラスにタイトルのような子がいました。
授業中に大声で、「昨日のテレビさー」と別のことを言い出す。
立ち歩く。
先生の話を妨害する。
まだまだひよっこだった私は、その子は親の愛情不足なのかな、先生にかまってほしいのかな、と思っていました。
ただ勉強するにつれて、他にもいろんな見方ができることを知りました。
今日はそんな子への対応を考えてみようと思います。
【分析】授業を邪魔するのは何でだろう
子どもが、授業を邪魔するのはなんでだろう。
ぴったり当てはまるか分かりませんが、「反抗挑戦性障害」という可能性があります。
反抗挑戦性障害
3つのパターンがあります。
- 過剰に怒りっぽい、すぐにイライラする、癇癪を起こす
―周りからの刺激に敏感になっている可能性がある - 周囲に挑発的な行動をとることや、口論が好き
大人が決めたルールや、権威のある人に噛みつきがち
わざと周囲の人をイライラさせたり、自分の失敗を他人のせいにしたりすることも特徴 - 意地悪で執念深い
相手を傷つけたいという悪意の行動をすると、自分にとってメリットがある、快感に感じるようになってしまっている。
といった特徴があります。
2は尾崎豊の「15の夜」のような感じ。
3は、Sっ気が出てしまっているといった感じではないでしょうか?
この「反抗挑戦性障害」はADHDの二次障害として知られています。
ADHDの子供に対して、誤った対応や不適切な環境が続いてしまうと、二次障害を起こして、反抗挑戦性障害を引き起こすパターンがあります。
他にも…
授業がつまらない、楽しくない。分からない。などといったことも考えられます。
もし、一つでも静かに受けている授業があったらチャンスです。
普段の授業になくて、静かに受けている授業にあるものを探しましょう。
例えば、座学が多い授業は邪魔をして、体育などの体を動かす授業では、集中して取り組めるのかもしれません。
また、専科の先生が行っている授業だったら、指示や授業の構成で子どもが落ち着けるヒントがあるかもしれませんよ。
子どもの見方については、こちらに詳しく記事にしてあります。
ぜひご覧ください。
対応策(ADHDの子へのかかわり方を起点にして)
今回は「反抗挑戦性障害」が当てはまった場合で対応策を考えていきます。
ADHDの二次障害として、反抗挑戦性障害がおこると書きました。
なので、ADHDの子へのかかわり方を紹介します。
ADHDの子は、ドーパミンが足りなかったり、過剰に分泌されたりして、バランスがうまく取れないのが主な原因です。
医療機関に相談した際に出される薬は、そのドーパミンの量を調整する薬が多いわけです。
担任としては、人とのかかわりの中で、ドーパミンの調整をしていきます。
- 動きをつける
―授業中に立ったり、座ったり動きがつくとよいですね。詳しくはこちらの記事をご覧ください。 - 見通しをもたせる
―授業のやり方は一定にしておくことです。算数・数学だったら、「問題を読む」「自分で考える」「友達と意見交流をする」「みんなで回答を突き合わせて解法を見つける」「演習問題を解く」という流れで授業をしていきます。
今、何をすべき時間かをはっきりしておくようにします。 - 目的を伝える
―何のためにこの勉強をしているのかが子どもが見えると変わってきます。今までの算数の勉強を振り返って、「ここが習ってきたことだけでは解けない。ここを解決するために今日の授業をがんばるよ」と伝えます。 - 高得点をつける
―その子の高得点をつけるのが味噌です。例えば、ドリルで1問しか解けたのが2問解けたらすかさず褒めるといった感じです。
過敏に反応したら
ただ、上記のようにやっても、上手くいかないときはあります。
反抗挑戦性障害の説明の1でも書きましたが、刺激に過敏に反応をしてしまう特性があるからです。
例えば、その子一人をみんなの前で褒めたら、過剰に反応して、逆に嫌がるなんてことも起こります。
また、指示が逆に通らなくなってしまうということもあるでしょう。
そこで、「全体やグループの中で褒める」「クールダウン」「セーフライン」「代替行動」という技を使いましょう
全体やグループの中で褒める
A君だけを褒めると過敏に反応をするので、
「この列は、とても集中して話し合えたね。」
「今日は、このクラスとても静かにテストに取り組めていたよ。集中していてよい姿だった。」
というようにAくんを間接的に褒めていくのがよい場合もあります。
クールダウン
指示に従わなかったり、一線を越えたときには、一度その場から離すのが有効です。
ただ、いきなりやると、「なんで俺だけ教室から離れさせられるんだ。」となり、子どもとの関係性が悪くなってしまいます。
前もって、全体に「2回、3回注意しても聞かなかったら、一度教室の外に出て隣の空き教室に行ってもらったり、学年主任の先生に話をしてもらったり、おうちの人に来てもらって話をすることがあります。教室はみんなで勉強するところだからね。」と伝えておきます。
他の先生の力を借りることが大切です。
セーフライン・代替行動
「ここまでならしていいよ」ということを伝えるのが「セーフライン」です。
子どもの中には注意をされすぎて慣れてしまっている子どももいます。
あれもこれもダメと伝えるのではなく、目先を変えて、「ここまでだったらOK」ということを伝えます。
先生のコントロール下で、子どもは自分で考えて行動を始めます。
また、セーフラインを守れたら、褒めることもできて、お互い気持ちの良い関係が作れます。
さらに、「代替行動」を伝えましょう。
例えば、「お話しをしたくなったら、大声を出すのではなくて、手をあげましょう。先生が話しているときに何か言いたくなったら、とにかく手をあげてね。」といったものです。
こうすれば、授業中に子どもの声で先生の指示や発問がかき消されるということが無くなります。
できたら褒めて、慣れてきたら「先生の話が終わったら、手をあげるようにしてみよう」とすると、さらによくなりますよね。
周りの子への対応
周りの子への対応も大切です。
困っている子をはやし立てたり、冷やかしたり、火に油を注ぐような環境になっている場合もあります。
場合によっては、それがグループで行われている場合もあるでしょう。
周りへの指導も大切です。
まずは、個別に話をすれば分かってくれそうな子どもから少しずつ切り崩していきます。
「これ以上、○○君をはやし立てるようなことがあれば、申し訳ないけれど、お家の方に来てもらって、一緒にお話をして、解決策をみんなで考えていかなきゃいけないね。」
と伝えます。
そうやって、一人ひとりの心を育てます。
また、席替えなどで、物理的に距離を離すというのも有効です。
記録を取ろう
日々の授業で、子ども少しでも改善したところがあったら、週案や授業記録にすかさず書き込みましょう。
今回、上手く行ったのは何故かな、この場面では、何で真剣になったのかな。
そんな姿を客観的に分析をしていくことで、授業力や、子どもへの対応力を伸ばすことができます。
子どもの成長を記録として残す中で、自分の成長記録にもなるとよいですね。
まとめ
5年ほどたって、その大変だった生徒が中学生になり、あるときばったり出会いました。
「スーさん先生ですよね?おれです。○○です。いまでは生徒会に入って頑張っています。」なんて向こうから声をかけてきたのでびっくりしたのを覚えています。
ちょうどそこに他の同級生もいて「あのころは、みんなはじけてたよなぁ。」としみじみ言っていました。
別の日に当時のある保護者に会ったときも
「スーさん先生ですよね。隣のクラスでお世話になった△△の母です。ほんとにあの時は大変でしたね・・・。」と保護者からもしみじみと言われたこともありました。
当時は自分で手一杯だったし、他の学校やクラスの様子が分からなかったので、新任だしこんなもんかななんて思っていたのですが、大変なクラスだったみたいです。
ただ、その時の精一杯はやっていたからこそ、声をかけていただけかなと思います。
一朝一夕で効果が表れることの方が少ないです。
だからこそ、少しの改善、少しの変化を見逃さずに、子どもたちと成長をしていきたいですね。
年単位の見通しでこちらも付き合っていきましょう。
きっと先生方は頑張っています。
重荷になりすぎませんように。
【記事の中でも紹介しましたが、こちらも是非読んでください!】
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