数量が以下に豊かでも、整理がついていなければ叢書の紅葉は覚束なく、数量は乏しくても生理の完璧な蔵書であればすぐれた効果をおさめるが、知識のばあいも事情はまったく同様である。いかに多量にかき集めても、自分で考え抜いた知識でなければその価値が疑問で、量では断然見劣りしても、いくども考え抜いた知識であればその価値はるかに高い。何か一つのことを知り、一つの真理をモノにするといっても、それを他のさまざまな知識や真理と結合し比較する必要があり、この手続きを経て初めて自分自身の知識が完全な意味で獲得され、その知識を自由に駆使することができるからである。
ショウペンハウエル「読書について 他二篇」(岩波文庫)のうち「思索」の冒頭の引用です。
読書をして、凄く勉強になった!と思っても内容をすぐ忘れてしまうなんてことないですか?
ショウペンハウエルが言っているように、知識を仕入れるのは大事だけれど、多量にかき集めるだけでは意味がないのです。
自分の身になるようにするには、まずは覚えること。
そして、覚えたことを実践して、日々の生活に活かしていくことです。
今日は、覚えることに焦点を当てて記事にします。
読んだことを忘れないために大切な2つのこと
繰り返しになりますが読んだことが自分の身になった状態というのは、本の内容を覚えていて、実践している状態です。
まず読んだことを忘れないようにしなければいけません。
読んで、「どんなことを学んだの?」と聞かれた時に答えられなかったら意味がないのです。
そこで、2つのことを意識して私は読書をしています。
1つ目は「3回アウトプットすること」
2つ目は「短い時間を使って細切れに読むことです」
なぜ、この2つの方法はなぜ記憶に残るのか、説明します。
<理論>本を読んだら3回アウトプットすると良いのか?
なぜ3回アプトプットすると良いのか。
それは、英単語を覚える時に似ています。
みなさん単語を覚える時は何を使ったでしょうか?
英単語ターゲット1900(旺文社)や速読英単語(Z会)売っている本の単語帳でしょうか?
カードに単語を書いて、オリジナルの単語カードを作ったでしょうか。
何にしても、1回読んで終わりということをしなかったはずです。
1回読んで覚える→テストをする→2~3日後にもう1回見直す→テストする→1週間後にさらに見直す→テストをする。
3回ぐらい覚えることと、アウトプット(テスト)をやって覚えた人が多いのではないかなと思います。
様々な脳科学研究を見ても、「最初のインプットから、7日~10日以内に3~4回アウトプットする」ことでき奥が定着することが明らかになっています。
脳は、どういう情報を「重要な情報」かと判断するかというと、「何度も利用される情報」です。
「何度も利用される情報」と脳が思うように、「1週間に3回見直しをする」のです。
読書ではどのように3回アウトプットするとよいのでしょうか?
できれば手をかけずにやりたいですよね。
<実践>手軽に簡単「3度目の正直読書術」
私は次のようにアウトプットをしています。
- 本を読みながら、気になるページの端をを折っておく(ドッグイヤーといいます)。
蛍光ペンで線を引く。メモをまとめるもOK。 - 面白かったところを、学校の朝の会で話して紹介する。
とにかく人に話すのが大切です。 - 本の感想や気づきを、X(旧:Twitter)や読書メーターで記録をする。
- ブログで読書記録としてまとめる。
この4つを1週間以内に行うのです。
まず、ドッグイヤーの部分を読み直して、自分は何が気になったのかを見直します。
次に、読み直したことを基に、自分は生徒に話をします。
学校に来る生徒にとっては、勉強になる、頭が良くなるという話題は、とても聞きたいものです。
人に伝えることで、学んだことを整地し直すことができる。
誰かに教えることが、自分への反省(実はわかっていないところがあったなど)につながる。
「生徒に話せたこと」が自信につながる。
生徒と自分がWin-Winの関係になります。
また、Xなどで簡単にレビューを書き、ブログに書きたい内容を簡単にまとめます。
そして、ブログで、自分が勉強になったこと、発信したいことを、今までの記事と比較・アップデートさせる形で書いていきます。
ここまですれば、読んだ文章が覚えられて自分の血肉になっていきます。
読書メモ・記録の書き方はこちらの記事で紹介しています。ぜひご覧ください。
<理論>スキマ時間で読書せよ
近くに本を置いておいて、時間があればちょっとずつですが本を読み進めるようにしていきます。
これも、本の内容を忘れないために大切なことです。
もちろん、忙しいのでなかなか時間が取れないというのもあるのですが、スキマ時間にちょこちょこ本を読むほうが、結果的には頭に残ります。
それはなぜだと思いますか?
「脳は締め切りがあると頑張る」、「脳は活動の最初と最後は頑張る」という2つの脳の特性を利用しています。
具体例をもとに紹介していきます。
<実践>制限時間があると、記憶力が高まる「時間に追われろ読書」
締め切りがある場合と、ない場合、頑張って仕事をするのはみなさんどちらでしょうか?
締め切りがあると、それに間に合うようにがんばりますよね。
それと一緒で、なにか物事を行う場合、「制限時間を決めると集中力がアップして、脳が高いパフォーマンスを発揮」します。
それを逆に利用して、「10分スキマ時間があるから、10ページ読もう!」というふうにすることで、集中力と記憶力が高まって効率的に読書ができるようになります。
<実践>細切れに読む「15分読書術」
60分まとめて読書をするのと、15分×4回で読書をするのとでは、どちらが効率がいいと思いますか?
答えは、15分×4回です。
なぜだと思いますか?
例えばマラソンで考えてみましょう。特に走り慣れていない人を想像するといいです。
マラソンが嫌いな人も、最初はがんばりますよね。
でも、中間は長すぎてみんな疲れて、ペースが落ちてしまう。
そして、ゴールが見えると全力ダッシュをしてしまう。
そんな経験をしたことはきっと誰しもあるはずです。
脳も一緒で、最初の5分と最後の5分はがんばるぞという気持ちで活動をします。
心理学的には「初頭努力」と「終末努力」と言われます。
簡単に言えば、人間は、最初と最後は絶対頑張ることができるのです。
ここまで書けば、60分と15分×4回だとどちらが記憶に残るかわかりますね。
60分だと、最初の5分と最後の5分の計10分しか脳が高いパフォーマンスにならないのに対して、15分×4回では、1回の読書で、10分高いパフォーマンスを保てるので、計40分記憶が高い状態で読書ができるのです。
常に本を読める場所に置いておいて、スキマ時間があったら、ぱっと読んでいくと、頭に残る読書になってきます。
さいごに
今回は、読んだら忘れない読書の方法を紹介しました。
- 「3回アウトプット」して記憶に残る読書に使用
- スキマ時間を使って、「時間に追われながら」本を読んでみよう
- 「細切れ読書」をすることで、脳がいいパフォーマンスのときに読書をしよう
が今回のポイントでした。
最後に、読書についての金言をもう一つ紹介してこの記事を閉じようと思います。
読書は、他人にものを考えてもらうことである。本を読む我々は、他人の考えた過程を反復的に辿るに過ぎない。習字をする生徒が、先生の鉛筆書きの線をペンで辿るようなモノである。だから読書の際には、物を考える苦労はほとんどない。
こちらもショウペンハウエル「読書について 他二篇」(岩波文庫)の「読書について」の冒頭から引用しました。
ダラダラと読書をしているのは、「先生の鉛筆書きの線をペンで辿るようなモノである。」
今回紹介した方法を使って、記憶に残る読書体験にして、生活をより豊かなものにしていきたいですね。
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