「シンギュラリティは来るのか。」生成AIの発達によって盛んにこんなことが言われています。
ChatGPTより少し前、日本でも、東京大学を合格するAIを作ろうと研究がされていました。
「AI vs. 教科書が読めない子どもたち」はベストセラーになりました。続巻の「AIに負けない子どもを育てる」も人気でした。
ただこれは、生成AIが出る前の話。今となっては、ちょっと古い本になってしまいました。
最新の巻の「シン読解力」では、生成AIの動向を踏まえつつ、この時代を生き抜くはどんな力が必要かが書かれています。
一緒に勉強していきましょう。
算数の授業で気づいた「言葉」の落とし穴

みんなで引き算の勉強をしていたときのことです。ある児童の言葉に、ハッとさせられました。
【問題】 「赤い袋に入ったチョコチップクッキーが7個あります。青い袋に入った四角いクッキーが5個あります。違いはいくつですか?」
この問いに対して、その子はこう答えたのです。
「えっと、赤い袋と青い袋に入っているのが違う。あと、チョコチップと、チョコチップが入ってないのが違う。あと……2個、数が違う!」
これを聞いたとき、あなたならどう答えますか?
実は、本書で著者の新井紀子先生が指摘する「シン読解力」の核心が、まさにこのエピソードに詰まっています。
算数や数学の世界で「ちがい」と言えば、当然のように「数量の差」を指します。しかし、理科で「犬と猫の違いは?」と聞かれれば、形や色の差に注目しますよね。つまり、教科によって、同じ言葉でも意味している中身が違うのです。
学習の学年が上がるにつれて、「今回は数量の違いを答えなさい」という親切な断りはなくなっていきます。文章の意味が変わっていることに気づかないまま進むと、子どもたちは「算数・数学は意味がわからない!」とつまずいてしまうのです。
日常会話と「学習言語」のあいだにある深い溝

学習で使う言語(学習言語)は、日常生活での言葉の使い方とは大きく異なります。
これまでは、子どもが文章を理解できないと「もっとしっかり読みなさい」「真剣に読めばわかるでしょ」といった根性論的な指導になりがちでした。しかし、つまずく本当の理由は「不真面目だから」ではなく、「大人が前提としているルールを、子どもが知らないから」なのです。
数学の有名な例として、図形の定義(包含関係)があります。
【問題】 二等辺三角形は「2つの辺が等しい三角形」である。では、正三角形は二等辺三角形であるか。
答えは「◯(=正三角形は二等辺三角形である)」です。
一般常識で考えれば、この2つは別物として分類したくなりますよね。しかし数学の世界には「すべてのものを、できる限り少ない言葉で記述しよう」という独自のルールがあるため、答えは◯になります。 この概念は小学校4年生から段階的に学び、中学1年生で本格的に扱いますが、ここでつまずく生徒が非常に多いのです。
また、本書では次のような言語の「乖離(かいり)」を示す例題も紹介されています。
【問題】 アミラーゼという酵素は、グルコースがつながってできた「デンプン」を分解するが、同じグルコースからできていても、形が違う「セルロース」は分解できない。
Q. セルロースは( )と形が違う。
- デンプン 2. アミラーゼ 3. グルコース 4. 酵素
(本書 P.94より引用 / 正解:1. デンプン)
専門家にとっては一般的な書き方でも、慣れていない人から見れば非常に紛らわしい文章ですよね。このように、教科特有の「言葉のルール」に気づき、それを補正していくことこそが、これからの学力を伸ばす鍵になります。
デジタル化時代に子どもの読解力を育てる2つのアプローチ

現代の子どもたちはGIGAスクール構想などでプリントやデジタル学習に慣れ、ノートを書き写す機会が減っています。また、電子マネーの普及で「お金の計算」をするリアルな経験も少なくなりました。こうした「実体験の不足」も、文章題が解けない原因の一つと言われています。
では、学校や家庭でどうアプローチしていけばよいのでしょうか? 本書では2つの方法が提案されています。
1. 10歳までに「1万冊」の読み聞かせ・音読
「1年で1000冊、1日3冊なんて無理!」と思うかもしれません。しかし、学校の国語の授業で読み、宿題の音読をすれば、それだけで毎日2冊分になります。あと1冊を読書や読み聞かせに充てれば、決して不可能な数字ではありません。 多様な文章に触れることで、言葉の持つ様々な意味を類推したり、同じ意味の別の表現(同義文)に気づく力が育ちます。
2. ワーキングメモリー(短期記憶)を鍛える
人間が意味のない文字列を覚えられるのは、一度に7文字程度が限界だそうです。しかし、文章を「意味のまとまり(単語や文脈)」として捉えられるようになると、一度に30文字近くを記憶して黒板からノートへ視写できるようになります。 この力を鍛えることで、文章を読む負荷が下がり、より深い読解に脳のリソースを使えるようになります。
最後に:大人の読解力も、いつからでも伸ばせる

「自分自身の読解力は大丈夫だろうか……」と不安になる方もいるかもしれません。本書の著者である新井紀子先生のチームは、読解力を測定・診断する「リーディングスキルテスト(RST)」を提供しています。

私自身、昔は指導教官から「文章がおかしい」と何度も指摘されていました。しかし、このブログを書いたり、自分の文章を端的に直す「推敲(すいこう)」を繰り返した結果、今では大学の先生から「文章が上手くなったね」と褒められるようになり、難解な学会の論文もスラスラ読めるようになりました。
読解力は、才能ではなく「やり方」です。何歳からでも絶対に伸ばすことができます。
生成AIが急速に発達する今だからこそ、人間にしかできない「真の読解力」を一緒に育てていませんか? 本書には、具体的なトレーニング方法もたくさん載っています。気になった方は、ぜひ手に取ってみてください!
学校や職場で読解力を伸ばすために、こんなトレーニングをしているよと言うことがありましたら、ぜひコメントで教えてください!

参考文献
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