以前、授業で必要な基本的なスキルについて記事にしました。
今回は、「担任として必要なスキル」についてお話をしたいと思います。
世の中に「学級経営」や「生徒指導」という観点からの教育書はたくさん出ていました。
もちろん学級経営と生徒指導は表裏一体であり、内容も被る場合が多いです。
学級経営も生徒指導も様々な視点があり、特に一年目の先生はどこから手をつけていいかわからないということも多かったと思います。
学習を教える以上に、学級経営や生徒指導は相手によって立ち回り方を変える必要があったからです。
今回、小林昭文先生の「担任学入門 まんがで身につく担任スキル」の本で、担任として必要なスキルがスッキリまとまっていました。
今回はこれを引用して、担任として必要な技能を考えていきたいと思います。
小林先生の考える「担任スキル」

学級を運営する上で必要な担任スキルが以下のように紹介されていました。
F 耕す ファシリテーション・スキル
F1「あ・い・さ・つ」を毎日、実践する
F2「クラス開き」を丁寧に行う
F3 生徒との交流と情報収集を継続する
F4 他クラスの担任と積極的に交流するG 育てる 権限によらないリーダーシップ・スキル
G1「ビジョンを共有する」
G2「モデルになる」
G3「助け合う」
G4「自己開示する」
G5「質問をする」H 支える 教育相談的スキル
H1 生徒が相談しやすい言動を維持する
H2 機会を活かして積極的に関わる
H3 欠席等の異変に敏感に対応する
H4 拙速を旨に「危機介入モード」をとるI 守る 危機介入スキル
I1 いじめ・暴力・差別等には「即時介入」
I2「危機介入モード」では秘密保持・多数決・民主主義を一時棚上げする
I3 拙速に連絡・情報共有をする
I4 危機後の心のケアを丁寧に行うー小林昭文(2024).『まんがで学ぶ担任スキル 担任学入門』.P34より
「担任スキル」の四つの機能とスキル習得に必要な意識ポイント「耕す」「育てる」「支える」「守る」より
それぞれの項目の目的は以下のようになります。こちらも長いですが引用します。
F 耕す
目的:クラス全体が安全で安心できる場であることを生徒に感じさせることが大前提です。この段階では「生徒たちの人間関係作り」に取り組みます。また、最初だけではなく、「耕し続ける」ことが必要です。
具体的なスキル:「クラス開き」が大切です。「仲の良いクラス」は自然成長的には実現しませんので担任が積極的に働きかける必要があります。ただし、「指示・命令的」ではなく、「生徒の主体性・協働性」を促す方法でなければなりません。
G 育てる
目的:生徒一人1人がリーダーシップを発揮できるクラスを目指す段階です。スクールカーストのようなヒエラルキーを防ぐために、全員が主体的に動ける環境を作ります。
具体的なスキル:「権限によらないリーダーシップ理論(日向野幹也)を取り入れます。この理論は「スキル」ですから、生徒たちも「練習すれば誰でもリーダーシップを発揮」できます。また、生徒の育成と共に、先生たち自身の問題解決に同じ理論とスキルが使えるという大きなメリットがあります。
H 支える
目的:クラスが1年中上手くいくことはなく、様々な小さな問題が発生します。これらに上手く対応するスキルを紹介します。生徒が相談しやすい言動をし、異変に敏感に対応することが求められます。
具体的なスキル:生徒・クラスは様々な困難に直面しますが、生徒全員の内面を直接把握することは不可能です。「丁寧に働きかけて反応を視ること」「生徒たちから不安や不調を伝えやすい態度を維持すること」が重要となります。
I 守る
目的:危機的状況のおけるクラスや生徒を守段階です。教職は決して平穏な仕事ではありません。危機における対応方法を知っておく必要があります。
具体的スキル:危機が起きた時、担任は「唯一の大人」であり、「強い権限を発揮しても生徒が認める存在」です。危機状態では民主主義や多数決は「一時棚上げ」するという知識と決断が必要です。何よりも「迅速に連絡する」ことが求められ、大きな事件が起きた場合はすぐに専門家に相談することが必要です。
さて、読んでいただいてどうでしたでしょうか?
世の中には様々な学級経営や生徒指導の考えがあります。
その中でも、ここだけは押さえておきたい。この考えを基礎として、自分の力を高めていくと良いのではないかというものが網羅されています。
「F 耕す」ではいわゆる「心理的安全性」を高めることについて言及されています。そのために、「グループエンカウンター」をやったりすることを思い付きますね。
「H 支える」「I 守る」は、アサーショントレーニングや実際の生徒指導の場面が思いつきます。
みなさんも、いじめ不登校の対策会議を行ったり、日常的の会話の中で情報交換をしていると思います。
私の中で 目から鱗だったのが「G 育てる」の項目です。
もちろん、リーダーシップを育てるのは大事です。
私も学級経営の中で、いろんな生徒に、生徒会や学級委員の経験を積ませたい。
どんな小さなことでもいいから、1人でやる力を身につけさせたいという思いを持って子どもに声をかけていました。
ただ、どうしても機会やその子の性格などもあり、全員にさせるということではできませんでした。
ただ、小林先生は、練習すれば、誰でもリーダーシップを発揮できるようになると言い切っているのです。
学級委員の子がリーダーシップを発揮できるように、助言をしてサポートをしたことはありましたが、そもそも、リーダーシップをスキルと捉えて、やり方を教えるといったことはしてきませんでした。
よくよく考えれば、ビジネスの世界では良くあることです。
リーダーシップの取り方、部下を育てる技術などなど、そんなタイトルの実用書は、本屋さんにごまんと置いてあります。
ということは、リーダーシップを取るコツこともある程度は教え、伝達できるということです。
さらに自分の学級の子どもの力を伸ばすために見直したい部分だと思いました。
皆さんはどこか引っかかった部分はありましたか?
最後に

担任業は時間がかかる
担任で必要なスキルを列挙しましたが、学習を身につけさせるよりも難しいと感じています。
それは、学習のように何か力をつけたら終わりではなく、担任として子どもの様子を見て、異変がないか気を配り、何かあれば介入する。
指導の結果ではなく、指導の過程そのものが重要な意味をもっているからです。
社会生活を営む上で、集団で生活することは不可避です。
学校はその練習の場でもあります。子どもたちが社会に出た時に、学校に通ってよかった!1つでもと思えるような学級経営をしていきたいですね。
本との出会い
「担任学入門 まんがで身につく担任スキル」は、学校にこの本が送られてきたことが出会いでした。
他の学校の先生にも聞いてみると、実際に届いているみたいです。
私の勤務している学校には2024年の11月ごろ届いた気がします。
皆さんの学校にも届いているかもしれません。
ぜひ一度読んで見てください。きっと自分に足らないものが見つかる1冊です。

参考文献・参考HP
参考文献
参考HP

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