以前、「授業をするために必要な基本スキル」について記事を書きました。
今回は、そもそも、文科省の考えている日本の教育の目指す姿について考えてみようと思います。
平成30年度の学習指導要領から「主体的・対話的で深い学びの実現」がメインテーマとして出てきました。
指導要領が公表されて、いろいろ研修も受けても解決しなかったのが、「主体的な姿」と「対話的な姿」は同時に子どもの姿に表出するのか?
そもそも「主体的な姿」と「対話的な姿」が現れると、「深い学び」になるのか?
「主体的な姿」と「深い学び」ってオーバーラップする感じがする。
うーん、上手く表現できないなと自分の中ではモヤモヤしていました。
何度も教育論文をまとめたのですが、「対話的な学び」は手立てを講じると表出するけれど、「主体的な学び」ってよくわからない。手立てを講じると「主体的な姿」が現れるものなのか???といつも疑問に思いながらいました。
最近、「担任学入門 まんがで身につく担任スキル(小林昭文先生)」を読んで、合点がいったので、今日はこの「主体的・対話的で深い学び」の姿について書いてみます。
指導要領には、「主体的・対話的d深い学び」はどう書いてあるの?

主体的・対話的で深い学びとは
小学校学習指導要領解説総則編及び中学校学習指導要領解説総則編では,主体的・対話的で深い学びについて次のように解説している。
主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善の具体的な内容については,中央教育審議会答申において,以下の三つの視点に立った授業改善を行うことが示されている。教科等の特質を踏まえ,具体的な学習内容や児童の状況等に応じて,これらの視点の具体的な内容を手掛かりに,質の高い学びを実現し,学習内容を深く理解し,資質・能力を身に付け,生涯にわたって能動的(アクティブ)に学び続けるようにすることが求められている。
① 学ぶことに興味や関心を持ち,自己のキャリア形成の方向性と関連付けながら,見通しをもって粘り強く取り組み,自己の学習活動を振り返って次につなげる「主体的な学び」が実現できているかという視点。
② 子供同士の協働,教職員や地域の人との対話,先哲の考え方を手掛かりに考えること等を通じ,自己の考えを広げ深める「対話的な学び」が実現できているかという視点。
③ 習得・活用・探究という学びの過程の中で,各教科等の特質に応じた「見方・考え方」を働かせながら,知識を相互に関連付けてより深く理解したり,情報を精査して考えを形成したり,問題を見いだして解決策を考えたり,思いや考えを基に創造したりすることに向かう「深い学び」が実現できているかという視点。
長年の疑問だったのは2つでした。
教師の手立て(工夫)によって、①『学ぶことに興味や関心を持ち,自己のキャリア形成の方向性と関連付けながら,見通しをもって粘り強く取り組み,自己の学習活動を振り返って次につなげる』になるのか?
せいぜい、教師ができるのは、教材の提示を工夫して、興味や関心を惹くくらいじゃないか。
教師の手立て(工夫)によって、③ 『習得・活用・探究という学びの過程の中で,各教科等の特質に応じた「見方・考え方」を働かせながら,知識を相互に関連付けてより深く理解したり,情報を精査して考えを形成したり,問題を見いだして解決策を考えたり,思いや考えを基に創造したりすることに向かう』ようになるのか?
これって、すごく高度なことだし、よっぽど学習している題材が好きじゃなきゃやらないんじゃないだろうか?
やっぱり、勉強することの興味関心を惹くように教師が工夫しするくらいしかできないのではないかということでした。
反面②の「対話的な学び」については、「話し合いの時間」を設けることで、授業に散りばめることはできるだろうなと考えていました。
そこで、今まで執筆してきた数学の教育論文は、教材提示の工夫と話し合いの仕方を工夫する手立てを講じてきました。
ただ、これが合っているかはずっと疑問でした。
ただ、こんな文章を見つけました。引用します。
子どもは、「対話的な学び」→「深い学び」→「主体的な学び」の順に発展する。
教師がコントロールできるのは、「対話的な学び」だけだと考えています。この「対話的な学び」を巧妙に続けることで、生徒たちは「深い学び」を得るようになり、その延長として、「主体的な学び」が実現されるのです。
私は、「深い学び」を「振り返り(リフレクション)」や「新しい枠組みや考えを取り込む学習プログラム(ダブルループ学習)」と捉えています。そして、この学びを継続することが、最終的に「主体的な学び」を可能にするのです。
ー小林昭文(2024).「担任学入門 まんがで身につく担任スキル」P140.キングベアー出版
つまり、対話をすることで、子どもは理解する。教師が「考えてみましょう」「友達と意見交換しましょう」ということで、対話的な学びを促すことができるのです。
対話的な学びを続けることで、理解が深まり、先ほど引用した中教審の③「深い学び」の姿が現れてくる。複雑なデータ処理や見方ができるようになり、深い学びをするようになる。
そして深い学びをしてきたからこそ、①の「主体的な学び」を子どもたちがどんどんしていくという流れになる。
このことを読んだ時に目から鱗でした。
ついつい先生というのは、主体的な姿を定義して、こうなるべきと子どもを引っ張ってしまいがちです。
でも、そうではなかった。
子どもたちがいろいろ対話をしながら学習していく中で、深い学びができていく。深い学びができると、さらに学びたいと主体的になる。という流れなのです。
だからこそ、先生として、対話的な学びになるように手立てを講じることで、子どもが深い学びをできる機会を作るのが大切なのです。
他にも、溝上先生が、「主体的な学習」についてレイヤーに分けて論じていました。
三層で理解する主体的な学習
Ⅰ 課題依存型の主体的学習
興味・関心をもって課題に取り組む、書く、話す、発表する等の活動を通して課題に取り組むⅡ 自己調整型の主体的学習
目標や学習方略、メタ認知を用いるなどして、自身を方向づけたり調整したりして課題に取り組むⅢ 自己物語型の主体的学習
中長期的な目標の達成、アイデンティティの形成、ウェルビーイングを目指して課題に取り組む(Ⅰが「即時的」学習しているのに対して、Ⅲの段階に行くほど、「対目的」に主体的な学習が深まっていく)
ー溝上慎一(2018).「三層からなる主体的な学習スペクトラム」より、執筆者が図を文章化した
最初は「Ⅰ興味を持って課題に取り組む」だったのが、「Ⅱ自己調整しながら学習」に取り組み、「Ⅲ中長期的な目標を持って」、人生を変えるような学びに発展させていく。
まさに、生涯学習を体現しているのが、「主体的な学び」のあるべき姿なんだなと思いました。
その萌芽を作るのが教育なのであり、その手立てを工夫するのが教師の役目だということと理解しました。
最後に

今回、引用した文を読んで、自分の中に、すっと「主体的・対話的で深い学び」の姿が落ちました。
皆さんの「主体的・対話的で深い学び」の解釈はどんな感じですか?
ぜひ、教えてください!
ちなみに、対話的な学習をすると、学びが深まるというエビデンスについては、指導要領には書かれていなかったと思います。そこについては、自分で調べて記事にしましたので、併せてご覧ください。
以前、「主体的・対話的で深い学び」について、文科省の審議官から聞いた講演もまとめています。こちらも読んでいただき、一緒に学びを深められたらと思います。

参考文献・参考HP
参考文献
参考HP
https://www.nier.go.jp/05_kenkyu_seika/pdf_seika/r02/r020603-01.pdf
https://www.mext.go.jp/content/20210215-mxt_sisetuki-000012797_6.pdf
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