授業で「友達同士考えを伝える機会をつくりましょう。これが主体的な学びにつながる。」と言われて久しいですね。
また、「アクティブラーニング」という言葉が一時期流行りました。
よく「友達に教えることで学びが深まる」ということを言われます。
実感としては分かります。ただ「主体的に学ぶ」ことと、学習が定着することはズレている気がしていました。
今回は「教えると学習が科学的に定着するわけ」を自分で納得したくて、調べてみました。
「教えるを使った勉強法」まで踏み込んでお伝えします。
勉強した内容を他人に説明する「ティーチングテクニック」
自分が勉強した内容を説明することを「ティーチングテクニック」といいます。
学習を定着させることに大事なのは「想起」と「再言語化」です。
つまり、「思い出して」、「自分の言葉で説明する」。
この活動を通して、勉強の内容が定着するのです。
何度も「思い出して」「自分の言葉を説明する」ことで、脳が「この知識は大切なこと」と認識し、長期記憶するようになるのです。
勉強した内容を他人に説明する「ティーチングテクニック」は、まさに「想起」と「再言語化」そのものです。
効果の高さについては、心理学の世界でも一定の評価があります。
1980年代にフランスのジャン=ポール・マーティン博士が提唱して以降、複数の実験で学力向上のメリットが確認されてきました。
他人にうまく説明するためには、まず自分がしっかり内容を理解する必要がありますし、相手に正しく伝えなければとモチベーションにも繋がります。
私達だって「なにかプレゼンをするとき、相手に伝わるように頑張ろう」と思いますよね。それと一緒なのです。
ただ、教えるにはハードルが高いという人も多いかもしれません。
いろんなやり方があります。
「ティーチングテクニック」を使った勉強法
「教えるつもり」だけで効果あり「教えるつもり勉強法」
教えるつもりで勉強するだけで、学習効果は高くなります。
2014年、ワシントン大学が学生たちを2つのグループに分けました。
- 「この後にテストがある」と思いながら勉強する
- 「この後で、他の学生に教えなければならない」と思いながら勉強する
その後に両グループに確認テストを受けさせたところ、「他の学生に教えなければ」と思いなが勉強したグループは、内容を正確に思い出す確率が28%も高く、とくに重要な情報ほど記憶に残っていたのです。
考え方を変えただけでここまでの差が出たのは、他人に「教えるつもり」になったおかげで学習の姿勢が能動的になったからです。
「人に教えなければ」となるだけで、「要点はどこかな?」と探したり、「どうすれば、もっと相手に伝わるかな?」と考えたりして学習に能動的になるのです。
この方法は予習・復習、どんな場面でも使えます。
常に、「この解き方はどうすれば友達に説明できるかな?」と考えながら勉強してみると良いでしょう。
「ラバーダック勉強法」
教えるつもりではなく、実際に教えてみましょう。でも、人でなくても大丈夫。
「ラバー・ダック勉強法」とは、お風呂に浮かべて遊ぶ黄色いアヒルのおもちゃを相手に、自分が学んだことを説明していくテクニックです。
お気に入りの人形でも、モニターに写したキャラクターに教えていくでもなんでもOKです。
犬や猫を飼っていたら、その子達に話しかけてもいいですね。
ただ、ノートや教科書などは見ないで、学んだことを思い出しながら説明をしていきます。
人形に説明していくうちに頭の中が整理され、より洗練されていくのです。
シンガポール国立大学による実験でh、見知らぬ人物の写真に向かって、勉強した内容を説明したグループは、複雑な概念への理解力が高まり、1週間後のテストでも良い結果をとれました。
是非一度試してみてください。
小さい子に教えよう「10歳児教授法」
更に応用編として、「10歳の子に伝えるにはどうすればいいか」と考えるのも一つです。
10歳の子に伝えるのは難しいですよ
例えば、数学の「標本調査」を10歳に説明するのはどうすればいいでしょうか?
そこで教えるコツとして、大きく2つポイントがあります。
- 「例えば・・・」と比喩を使う
- 相手が知っている知識を使う
「標本調査」について、私だったら、10歳の子にこう説明します。
「日本人の好きな食べ物を調査するにはどうすればいい?そうだね。日本に住んでいるみんなに『好きな食べ物はなんですか?』と聞けばいいよね。
でも、それって不可能だよね。日本人1億人いるもんね。
じゃぁどうすればいいかな。そう、100人くらいの人に聞いて、それを『日本人の好きな食べ物』ってすればいいよね。
え、なんか感覚とおかしい?100人って誰に聞くんだって?
じゃぁ、例えば、味噌汁を作っているとしようか。味噌汁が美味しくできたかどうやって確認する?
お玉に少し味噌汁を乗せて味見するよね。そう、それがさっきの100人になるのよ。
味見する前にさ、きっと味噌汁をかき混ぜない?それってなんで?味噌が汁全体に溶けるようにだよね。
じゃぁ、さっきの話に戻るけど、100人てどんな人に聞けばいいと思う?
身の回りのひとだけでなく、大人から子供まで、男性も女性もまんべんなく聞かないといけないよね。
そうやって、取り出した100人を『標本』といって、その標本から全体の傾向を考えることを『標本調査』と言うよ。」
といったふうに、その10歳の子でもわかる味噌汁を例として「標本調査」の説明をしてみました。
わかりやすい説明が必要になったら、「例えば」と、「相手が知っていること」を使って説明しましょう。
最後に
今回は、相手に教えることで学習効果がアップする理由を説明しました。
- 勉強した内容を他人に説明することで、想起と再言語化が促されて学習定着率がアップ
- 「教えるつもり」で勉強するだけで効果あり
- 人形など人間じゃないものに説明することでさらに効果がアップ
- 10歳の子にわかりやすく説明しようとすれば、さらに自分で知識を噛み砕いて理解できる
教えるという観点で、自分の勉強をより定着させていきましょう!
参考文献
JEAN-POL MARTIN.(1985)Learning by teaching (LdL): Conceptualization as a source of happiness
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