昔はやりましたね。もしドラ。
ある方にお勧めをしてもらったので、今回読んでみました。
原作は、ドラッカーの「マネジメント」を読んだ高校野球の女子マネージャーが甲子園にチームを導いていくというお話でした。
ただ、原作に取り上げられている、「マネジメント」の引用を学校の先生に置き換えたら、学校の現状が見えてくるのでは?と思って、感想込みで記事にします。
ご笑覧ください。
学校とは何か定義しよう
さて、学校とはどんな組織かを定義しよう。その点において、次のような言及がなされている。
企業の目的と使命を定義するとき、出発点は一つしかない。顧客である。顧客にとって事業は定義される。事業は、社名や定款や設立趣意書によってではなく、顧客や財やサービスを購入することにより満足させようとする欲求によって定義される。顧客を満足させることこそ、企業の使命であり目的である。したがって「われわれの事業は何か」との問いは、企業を外部すなわち顧客と市場の観点から見て、初めて答えることができる。
ードラッカー「マネジメント エッセンシャル版」P25
会社にしても、公的機関にしても、働きかける相手がいるのである。
学校にとっての「顧客」とは誰か?
学校の顧客は誰と言えるだろうか?
「学校に通う児童生徒」が顧客と一番に思い浮かぶのではなかろうか?
ただ、それでは物足りない。確かに顧客は「児童生徒」であるが、顧客を満足させるためにはどうすればいいのだろうか?
やさしい問いではない。まして答えの分かりきった問いではない。しかるに、この問に対する答えによって、企業自らをどう定義するかほぼ決まってくる。
ードラッカー「マネジメント エッセンシャル版」P24
マネジメントの中にはキャデラックを例にこのように書かれている。
1930年台の大恐慌のころ、修理工からスタートしたキャデラック事業部の経営を任されるにいたったドイツ生まれのニコラス・ドレイシュタットは、「我々の競争相手はダイヤモンドやミンクのコートだ。顧客が購入するのは、輸送手段ではなくステータスだ」と言った。この答えが破産寸前のキャデラックを救った。わずか2、3年のうちに、あの大恐慌時にかからわず、キャデラックは成長事業へと変身した。
ードラッカー「マネジメント エッセンシャル版」P25
顧客が購入するのは、車という輸送手段(例えばフォードのような大衆車)ではなく、キャデラックを持っているというステータスを買うように仕向けることで、大成功を納めた。
つまり輸送手段以外の付加価値をつけたということである。
学校にとっては、どんなことを売りに定義をすればいいのだろう。
学校の現在持っている機能を考えよう。
- 地域の将来を担う人材を育成する
- 子どもたちの豊かな学びと成長を保障する
- 地域コミュニティの拠点として機能する
- 児童生徒の学習・生活の場を提供する
- 地震などの災害時には地域住民の避難場所として機能する
このあたりだろうか。
ただ、現在は、そんな綺麗事だけではない。
児童・生徒の指導だけでなく、保護者間のトラブル・仲裁を求められることもある。
地域の仕事の一部を担わされることもある(例えば地域の資源回収に先生が動員されたり、地域の花壇を世話したりしていた時代もあった。)
学校の使命が多角化してしまってぼやけてしまっている。
もう一度学校の定義をする上で「顧客」即ち「児童・生徒」に焦点を当てて考えてみたい。
学校とは、地域はもちろん、国家の将来を担う人材を育てる機関である。
となると、地域も顧客に含めねばならない。
ただ、先ほど書いたような、地域の拠点とか、保護者の仲裁は雑事であり、本丸ではない。
「児童生徒・地域・国民」を満足(国家の将来を担う人材を育てる)するには、「児童生徒が成長する」このことに尽きるのではないか。
最後に忘れてはならないのが、「教師」も顧客であるということ。
児童生徒が成長すれば、教師のやりがいや指導力・力量の向上などにより、みんなが満足できるはずである。
イメージとしてはこんな感じ。
以上より、学校を「児童生徒の成長を促す組織」と定義する。
問題点
ただ、学校は営利企業ではない。上の図の赤字のような問題がある。
つまり、
・カリキュラムが決められていて、最低限やることは決められている。児童生徒のためといって、政府の要請によって、カリキュラムを決めなければいけない。そのカリキュラムをこなした上で、学校独自の「児童生徒の成長を促す活動」を行なっていかなければならない
・人員には限界があり、無限に予算が注ぎ込まれない。児童生徒の時間も有限であり、無限に「教育」という商品を与えることができない。
ここから、今現在、学校が組織として苦しい状況にあるのがわかるのではなかろうか?
この記事のまとめ
今回は、ドラッカーのマネジメントから「学校」という組織を「児童生徒の成長を促す組織」と定義した。
ただ、問題点として、政府の要請どから、学校には最低限行うべきカリキュラムがあり、それをこなすことが大半を占めている。
また、地域や保護者の要請も多くなってきている。
カリキュラムや地域・保護者の要請をこなした上で、学校独自の活動を行うことは、組織の一員である教員にとっても、顧客である児童生徒にとってもリソース不足の状態にあり、機能不全に陥っている。
現在、文科省は働き方改革の旗印のもと、さまざまな改革を提案しているが、遅々として学校現場は変わっていない状態がある。
次の記事では、学校の抱える問題をもう少し詳細に明らかにし、「児童生徒が成長を促す」組織をどうすれば実現できるか考えてみよう。
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